ドルガバが吹き飛ばした

2018年11月19日、日産の西川CEOが緊急会見を開いたのが日本時間の22時だ。時差はマイナス8時間だから、イタリアでは14時である。

こちらの主要紙では、翌20日付からゴーン氏逮捕の報道が始まった。編集作業をする時間が十分あったにもかかわらず、いずれもトップ扱いではなかった。

まずは経済紙『イル・ソーレ24オーレ』である。1ページ目と17ページ目に「報酬および会計ルールに違反したため」とした12行ほどの前文こそ載っているが、記事は21ページ目まで出てこない。囲みでアウディのスタッドラー前CEOやフォルクスワーゲンAGのヴィンターコルン前CEOなど、自動車業界で同様に逮捕や起訴されたことのある4人を紹介しているものの、肝心の本文はわずか3段だ。

翌21日は、ルノー株が一気に値下がりしたこと、ゴーン氏が最高10年の懲役に服する場合があること、そしてルノーではティエリー・ボロレ氏が暫定トップに就任したことを報じている。ただし、扱いはさらに後退して24ページ目である。

続く22日も24ページ目の扱いだが、全ページを俯瞰(ふかん)すると、ある“大事件”に、よりページが割かれている。大事件とは、ファッションブランドであるドルチェ&ガッバーナの広告動画が、中国・アジア人に対して差別的だったとして炎上したというものだ。

23日は「日本の司法制度下では、起訴されると無罪になることが極めてまれ」「10年以下の懲役の可能性」が説明されているものの、やはり19ページ目での扱いだ。

イタリアの主要紙のひとつである『コリエッレ・デッラ・セーラ』も同じような扱いである。報道が開始された11月20日は「日本の国内2位の自動車会社を救った」ことや「2018年2月にルノーの筆頭株主であるフランス政府が従業員の抗議を背景に、ゴーン氏の報酬を3割カットした」ことの経緯を紹介している。だが、掲載されているのは、かなり後ろの35ページ目だ。

そして22日には前述の『イル・ソーレ24オーレ』と同様、ドルチェ&ガッバーナ問題に紙面が割かれ、早くもゴーン問題は消えてしまっている。

アウディのルパート・シュタートラーCEO(当時)。2018年3月、ジュネーブモーターショーで。
アウディのルパート・シュタートラーCEO(当時)。2018年3月、ジュネーブモーターショーで。拡大
フォルクスワーゲンAGのマルティン・ヴィンターコルンCEO(当時、手前)。2012年9月26日撮影。
フォルクスワーゲンAGのマルティン・ヴィンターコルンCEO(当時、手前)。2012年9月26日撮影。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト。国立音楽大学ヴァイオリン専攻卒にして、二玄社『SUPER CG』元編集記者、そしてイタリア在住21年と脈絡なき人生を歩んできたものの、おかげで妙に顔が広い。今日、日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして執筆活動に携わると共に、NHKラジオフランス語テキストでも活躍中。10年以上にわたるNHK『ラジオ深夜便』レギュラーリポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも奮闘している。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『カンティーナを巡る冒険旅行』『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(ともに光人社)、電子書籍『イタリア式クルマ生活術』(NRMパブリッシング)など数々の著書・訳書あり。

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