100年を超える進化の果てに
ワイパーはフロントウィンドウだけに取り付けられているわけではない。ボディー形状の変化で、リアウィンドウの雨滴を拭い取る必要が生じた。日本で初めてリアワイパーが装着されたのは、1972年の「ホンダ・シビック」である。ハッチバックやワゴン、SUVといったボディータイプのモデルでは、リアワイパーが装備されることが多くなっていった。
1988年には、「トヨタ・マークII/チェイサー/クレスタ」の上級グレードに、サイドウィンドウワイパーがオプション装備された。前端部に取り付けられ、ドアミラーの視認性を向上させる目的である。同じ年に登場した日産の初代「シーマ」には、ドアミラーワイパーが採用されている。どちらも、世界初の装備だった。ヘッドライトワイパーはもっと古く、1971年に「サーブ99」に採用されたのが初めてである。
フロントウィンドウのワイパーは多くの場合2本だが、トラックなどでは3本のものもある。乗用車でも「トヨタFJクルーザー」などは3本だった。逆に、1980年代からメルセデス・ベンツは1本ワイパーを採用していた。リンケージを使ってワイパーアームを伸縮させ、拭き取り範囲を広くする凝ったものだった。画期的な機構ではあったが、そばを通る人に水をかけてしまうなどの問題があり、2本ワイパーに戻されてしまった。
ガラス面の汚れ除去にもワイパーは有効だが、水分がない状態で作動させると、ガラスを傷つけるおそれがある。雨が降っていない時は、まずウィンドウウオッシャーを使って洗浄液を噴射すればいい。洗浄液のタンクはエンジンルーム内に設置されており、ポンプを使ってノズルからガラスに向けて発射する。困るのがオープンカーで、ウオッシャー液が室内をぬらしてしまうことがあった。メルセデス・ベンツは2012年に発売した「SL」に「マジックビジョンコントロール」という技術を採用。ブレードの内側に細かい穴が開けられており、ワイパーが上方に動くと上側から、下方に動くと下側からのみ噴き出す。オープン時でも安心なだけでなく、洗浄性能を高めてウオッシャー液の消費量を抑えることができるという。
2013年には、マクラーレンが超音波によって雨滴を除去する装置を開発していると伝えられた。100年以上にわたってワイパーの基本構造は変わっていないが、ワイパー自体をなくすことが最後の進化になるのかもしれない。
(文=webCG/イラスト=日野浦剛)
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