事故の予防にも貢献する「つながる」技術

高速道路の逆走も、高齢者の運転者に多い事案といえる。国土交通省の統計によると、免許保有者における75歳以上のドライバーの割合は6%であるのに対し、逆走した運転者では45%を占めるという。事案(事故または確保に至った逆走事案)の件数で見ても、75~79歳のドライバーが起こしたものは年平均39.8件と最多。次いで多いのが80~84歳のドライバーが起こしたもので、35.5件となっている(平成23年~28年の平均)。

NEXCOは逆走事故を減らすべく対策技術を公募し、応募総数100件から有望な案を選定して実道検証を実施。昨年末に18件の検証結果を発表した。防眩(ぼうげん)板に逆走側からだけ見えるように「逆走中」と表示する技術や、錯視を利用した注意喚起の図案を路面表示する技術など、設置物を使った技術には実用可能なものが多かった一方、道路側で逆走車を検知して情報収集する技術や、車載器を活用して注意喚起する技術については、非選定、ないしさらなる検証を要するという評価がほとんどだった。

確かに設置物による注意喚起は現実的だが、今後はITを活用して対策を強化したいところだ。いま自動車業界では「CASE(つながる、自動化、シェア&サービス、電動化)」がトレンドだが、中でも「つながる」が最重要テーマであり、通信業界やITベンチャーなども交えてV2X(Vehicle to X)の研究開発が進められている。ゆくゆくは路車間通信や車車間通信、クラウド接続まで可能になるだろうし、高速道路だけでなく一般道でも恩恵を受けられるようになるはずだ。

周辺情報をリアルタイムで得られれば、ドライバーの死角をカバーできるので、例えば右折時に対向車の陰から出てきた二輪車と接触するような事故は防げる可能性が高い。また、インフラ情報と車両の制御を連携させることができれば、高速道路での逆走や信号無視のような危険行為はシステム側で阻止できるようになる。

もちろん、実用化は簡単なことではない。安全技術には確実性や正確性が求められるし、技術の普及は市場性や採算性も見込めてこそ成立する。ものによっては法律や社会制度、社会受容性といったハードルも越えなければならないだろう。しかし、決して不可能ではない。こうした技術が一つひとつ実用化されていき、交通事故の悲劇がなくなることを願ってやまない。

(文=林 愛子/写真=経済産業省、国立研究開発法人産業技術総合研究所、日産自動車/編集=堀田剛資)

日産が2019年のCESで発表した次世代技術「Invisible-to-Visible(I2V)」。車載のセンサーやクラウド上から得た情報をドライバーの視野に重ねて投影。ドライバーは見通しの悪いコーナーの先の状態や、路面状況、対向車の有無などを把握し、的確に対応することができるという。
日産が2019年のCESで発表した次世代技術「Invisible-to-Visible(I2V)」。車載のセンサーやクラウド上から得た情報をドライバーの視野に重ねて投影。ドライバーは見通しの悪いコーナーの先の状態や、路面状況、対向車の有無などを把握し、的確に対応することができるという。拡大
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