前衛の時代・フィアットの時代

その晩の「未来派なコンテンツ」とは、バーチャルリアリティー(VR)アーティストせきぐちあいみ氏のライブ・ペインティングであった。

彼女が駆使するのは、Googleが開発した描画VRイラストレーションアプリ「Tilt Brush」である。実際にアプリを操作するインターフェイスは、ヘッドマウントディスプレイとコントローラーで構成されたVRデバイス「HTC Vive」だ。

コントローラーの形状は、両手ともいわばジョイスティック風のものにすぎない。だが、ディスプレイ上では、パレットと筆、もしくはピクチャーのパーツを投げるガンの役目を果たす。

ビートの効いたBGMが流れる中、制作中のせきぐち氏の姿も、プロジェクターから投影される作品と合成して映し出される。ビジュアル的にも極めて斬新だ。

いっぽう、歴史におけるイタリア未来派とは何だったのかについては、前述のアランプレセ本部長が簡潔に解説していた。

1909年、イタリアの詩人フィリッポ・トンマーゾ・マリネッティ(1876-1944)がフランス紙『フィガロ』に掲載した「未来派宣言」がその始まりである。古代への信仰やアカデミックな形式を打破するなど、過去の芸術的観念と決別することを目指した。

ウンベルト・ボッチョーニやジャコモ・バッラ、ジーノ・セヴェリーニといったアーティストがそれに賛同した。

VRアーティストのせきぐちあいみ氏。彼女の足元にあるのが、VRデバイス「HTC Vive」のコントローラー。
VRアーティストのせきぐちあいみ氏。彼女の足元にあるのが、VRデバイス「HTC Vive」のコントローラー。拡大
作品制作中は、せきぐち氏の姿も画面の中に投影される。
作品制作中は、せきぐち氏の姿も画面の中に投影される。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト。国立音楽大学ヴァイオリン専攻卒にして、二玄社『SUPER CG』元編集記者、そしてイタリア在住21年と脈絡なき人生を歩んできたものの、おかげで妙に顔が広い。今日、日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして執筆活動に携わると共に、NHKラジオフランス語テキストでも活躍中。10年以上にわたるNHK『ラジオ深夜便』レギュラーリポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも奮闘している。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『カンティーナを巡る冒険旅行』『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(ともに光人社)、電子書籍『イタリア式クルマ生活術』(NRMパブリッシング)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など数々の著書・訳書あり。

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