身近な“未来派作品”

未来派は賛同した作家の大半がファシズムに好意的であったこと、そして「退廃芸術」を排除したドイツとは対照的に、イタリアのファシスト政権が創作活動の多様性に寛容であったことから、第2次大戦中も活動が続けられている。

未来派を導いたマリネッティは1944年に世を去るが、第2次大戦後も、未来派が目指したものはさまざまなアーティストによって、表現方法を変えて引き継がれた。

たとえミュージアムに行かなくても、私たちの身のまわりには数々の未来派の面影がある。

イタリアで有名な祭りのひとつ、ヴィアレッジョのカーニバルにおけるマスコット「ブルラマッコ」は、未来派画家ウベルト・ボネッティによる1931年の作である。ちなみに彼は、1930年代に描いた作品中で、明らかにアルファ・ロメオと判別できるクルマを登場させている。

より身近なものは、2002年からヨーロッパで流通している20セント硬貨のイタリア版であろう。裏面には、ボッチョーニの代表作『空間の中の連続性の形態』(1913年)が記されている。欧州旅行のときの小銭が、いまだにタンスの中にあるという方は、確認してみるといいかもしれない。

また日本でも有名な食前酒「カンパリソーダ」が入った円すい形の瓶は、これも未来派アーティストのひとり、フォルトゥナート・デペーロによる1932年のデザインである。

20セント硬貨のイタリア版。裏面のモチーフは、ボッチョーニによる『空間の中の連続性の形態』である。
20セント硬貨のイタリア版。裏面のモチーフは、ボッチョーニによる『空間の中の連続性の形態』である。拡大
フォルトゥナート・デペーロがデザインした「カンパリソーダ」の瓶。
フォルトゥナート・デペーロがデザインした「カンパリソーダ」の瓶。拡大
こちらも未来派の流れをくむアルマンド・テスタによるベルモット酒「カルパーノ」のポスター。
こちらも未来派の流れをくむアルマンド・テスタによるベルモット酒「カルパーノ」のポスター。拡大
ヴィアレッジョ・カーニバルのマスコット「ブルラマッコ」を考案したウベルト・ボネッティも、未来派アーティストのひとり。
ヴィアレッジョ・カーニバルのマスコット「ブルラマッコ」を考案したウベルト・ボネッティも、未来派アーティストのひとり。拡大
「ブルラマッコ」に扮装(ふんそう)した人(左)。今日でもヴィアレッジョ・カーニバルの顔である。ミス・イタリア2018(中央)とともに2019年2月撮影。
「ブルラマッコ」に扮装(ふんそう)した人(左)。今日でもヴィアレッジョ・カーニバルの顔である。ミス・イタリア2018(中央)とともに2019年2月撮影。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。21年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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