初タイトル、大一番での棄権、そしてチーム離脱
1973年には1勝もできずコンストラクターズランキング6位に沈んでいたスクーデリア・フェラーリ。総帥エンツォ・フェラーリは、下位でも奮闘するラウダに白羽の矢を立てた。さらにフィアットからやってきたルカ・ディ・モンテゼーモロをリーダーに、名デザイナーだったマウロ・フォルギエリにマシン開発を担当させ、チーム復興を任せた。2000年代になりフェラーリ黄金期を築いたミハエル・シューマッハーやジャン・トッド、ロリー・バーンらによる“ドリームチーム”に通ずる、優勝請負人たちが集められたのだ。
1974年は、スペインGPでの自身初優勝を含め2勝、最多9つのポールポジションを獲得するも、シーズン終盤にリタイアが続きランキングは4位。これが翌年になると、フォルギエリの傑作「312T」をドライブしたラウダが、八面六臂(ろっぴ)の大活躍を見せることになる。この年も9回のポールを記録、年間勝利数は5回を数え、その他レースでも着実にポイントを稼いだこともあり、ラウダにとって最初の、そしてフェラーリにとっては1964年以来となるタイトルを獲得したのだった。
最古参チームを復活に導いたラウダの勢いは1976年も止まらず、第9戦イギリスGPまでで5勝、2位2回、3位1回とチャンピオンシップを席巻。だが第10戦ドイツGPであの大事故に見舞われてからは、シーズンを通して丁々発止とやり合っていたジェームズ・ハントの猛追にあう。奇跡のカムバックの末に迎えた最終戦は、タイトルがかかった大一番、富士スピードウェイでのF1世界選手権イン・ジャパン。しかしラウダは、大雨であまりに危険だとして2周して棄権する英断を下し、わずか1点差でハントに栄冠を奪われてしまった。
1977年シーズンは、3回の勝利を含め計10回もポディウムにのぼり、2度目のタイトルを獲得。だが前年の棄権も影響してか、フェラーリとの関係はギクシャクしたものになり、翌年にブラバムへ移籍することを決めると、2戦を残して途中でチームを去ってしまった。
タイトルよりも命を優先できる勇気、またドライバーとして絶頂期を迎えていた時期であってもチームを離脱する決断力。御大エンツォを前にしても臆せずに自らの意志を貫き通した、ラウダらしい姿勢があらわれたフェラーリ時代だった。
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