次世代のメンターとして

引退後のラウダは、航空機産業に従事する傍ら、F1チームの首脳を歴任。古巣フェラーリではアドバイザーを、現レッドブルの前身であるジャガーではチーム代表を務めた。また2012年にはメルセデスの非常勤会長に就任。2014年からのシルバーアロー黄金期の立役者の1人として、またチームの中核となるルイス・ハミルトンのメルセデス入りを後押しした人物として、大きな功績を残した。

亡くなるまで40年以上にわたりF1に関わり続けたラウダ。彼がF1を離れなかったというよりも、「F1が彼を離さなかった」といった方が正しいのかもしれない。元チャンピオンというネームバリューはもちろんあっただろうが、F1が彼を求め続けた一番の理由は、「彼が正直な人間だったから」ではないだろうか。

現役時代から、ラウダは歯に衣(きぬ)着せぬ発言をするドライバーとして知られていた。傍若無人ということではなく、自分が信じることを曲げずに言い続け、そして実行に移すことのできる人間だった。取り繕うことはしない、極めてストレートな男だった。だからこそ、多くのドライバーやチーム関係者、ジャーナリストからも信頼を得ていた。

ハミルトンとニコ・ロズベルグが激しいライバル心を燃やし、メルセデス内の雰囲気が悪化する時にも、ラウダは双方のドライバーと良好な関係を持ち続けることができた。ハミルトンやロズベルグのみならず、メルセデスのトト・ウォルフ代表も、ドイツのダイムラー本社の役員たちも、そしてライバルチームのドライバーやスタッフも、良きメンターであったラウダを慕っていた。何かと世知辛いF1の世界にあって、これほど信頼でき、心のよりどころになる人物は、いなかったのではないだろうか。

ニキ・ラウダ。享年70歳。不撓不屈のレジェンドよ、安らかに。

(文=柄谷悠人/写真=フェラーリ、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲン、BMW/編集=櫻井健一)
 

2019年のモナコGP(決勝:5月26日)でフェラーリは、ラウダの名前を入れた特別デカールを施し、かつて跳ね馬で活躍したヒーローの死を悼んだ。現在のスクーデリア・フェラーリのエースであるセバスチャン・ベッテルは、昨年、病床のラウダに直筆の手紙を送ったことを明かした。(Photo=Ferrari)
2019年のモナコGP(決勝:5月26日)でフェラーリは、ラウダの名前を入れた特別デカールを施し、かつて跳ね馬で活躍したヒーローの死を悼んだ。現在のスクーデリア・フェラーリのエースであるセバスチャン・ベッテルは、昨年、病床のラウダに直筆の手紙を送ったことを明かした。(Photo=Ferrari)拡大

非常勤会長を務めるメルセデスAMG F1チームのドライバー、ルイス・ハミルトン(左)とニコ・ロズベルグ(右)とともに記念写真に収まるニキ・ラウダ(中央)。写真は2015年12月に行われたメルセデスのモータースポーツイベント「Stars & Cars」でのワンシーン。


	非常勤会長を務めるメルセデスAMG F1チームのドライバー、ルイス・ハミルトン(左)とニコ・ロズベルグ(右)とともに記念写真に収まるニキ・ラウダ(中央)。写真は2015年12月に行われたメルセデスのモータースポーツイベント「Stars & Cars」でのワンシーン。
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