“ジャイアン対のび太”化が必至!?

今回のFCAとルノーの経営統合をヨーロッパ市場に限って予想した場合、新生アルピーヌを除くと、ルノーおよびダチアという普及ブランドしか持たぬルノーにとっては、プレミアムブランドであるマセラティ、アルファ・ロメオ、ジープが、連合内のラインナップに加えられることになる。

FCAにとっては、なかなかつくることができなかったエントリーブランドをルノー側のダチアで補完できる。

ただし、さまざまな課題も浮かび上がってくる。まずは2010年から続くルノーとダイムラーの戦略的提携と、長年にわたるFCAとPSAによる商用車の共同開発・生産といった過去の関係を継続するのか、それとも清算するのかが気になるところだ。

中国に目を向ければ、FCA/ルノー双方とも、この世界最大の市場において、ドイツおよび米国メーカーに大きく後れをとってきた。経営統合によって、どのようなリベンジを目標とするのかも気になる。

CASEに対する対応も焦点となる。電動化関連では、ルノーは日産の技術を用いて欧州メーカーに先んじてEV戦略を進めることができた。いっぽうFCAは、北米ではクライスラーのハイブリッド車を、フィアットからは2013年に「500」のEV版である「500e」を投入したが、いずれも大きな成功といえる販売実績を示していない。

自動運転に関していえば、ルノーは2018年にルーアン-ノルマンディーの自動車運転研究所と共同で、「ZOE」をベースにした自動運転の公道実験を開始している。FCAは自動運転技術に関して、2017年にBMW/インテル/モービルアイ連合とパートナーシップを結んでいる。

だがマクロ的にみれば、両社とも日独メーカーに遅れていた。もし今回の構想が実現して、日産や三菱をも包括した大きな企業連合が形成された場合、ルノーおよびFCAが、自動運転やEVの技術で日本の2社への依存度を高めることは容易に想像できる。

『ドラえもん』のキャラクターに例えれば、ジャイアン(ルノー)とスネ夫(FCA)がほったらかしておいた宿題(EV、自動運転)を、のび太(日産、三菱)にやれと迫るような力関係が、今からイメージできるのは筆者だけか。

シエナにあるルノー販売店のショールーム。
シエナにあるルノー販売店のショールーム。拡大
ルノー販売店の一角に設けられたダチアの展示コーナー。
ルノー販売店の一角に設けられたダチアの展示コーナー。拡大
2016年11月、ロサンゼルスモーターショーで。「クライスラー・パシフィカ ハイブリッド」の披露会場。
2016年11月、ロサンゼルスモーターショーで。「クライスラー・パシフィカ ハイブリッド」の披露会場。拡大
同じく2016年11月、ロサンゼルスショーで。「フィアット500e」。
同じく2016年11月、ロサンゼルスショーで。「フィアット500e」。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト。国立音楽大学ヴァイオリン専攻卒にして、二玄社『SUPER CG』元編集記者、そしてイタリア在住21年と脈絡なき人生を歩んできたものの、おかげで妙に顔が広い。今日、日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして執筆活動に携わると共に、NHKラジオフランス語テキストでも活躍中。10年以上にわたるNHK『ラジオ深夜便』レギュラーリポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも奮闘している。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『カンティーナを巡る冒険旅行』『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(ともに光人社)、電子書籍『イタリア式クルマ生活術』(NRMパブリッシング)など数々の著書・訳書あり。

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