“家風”の違いをどうする?

いっぽうルノーも、本連載の第528回に記したとおり、AMCとの関係に失敗したあと、日産とのアライアンスで初めて国際的協業における成功をみた。大陸を超える規模のアライアンスの成功経験という点では、フィアット&クライスラーの場合と似たり寄ったりといえよう。

気になるのは、ルノーとFCAとの根本的な成り立ちの違いである。FCAの筆頭株主は前述したアニエッリ家の投資会社で、FCAと同様に2016年からトリノからアムステルダムへと本社を移したエグゾールである。FCAの会長であるジョン・エルカンが代表を務めている。2019年6月1日現在、エグゾールはFCA株の28.98%を所有し、議決権ベースでは42.11%に達する。

参考までに、2019年2月に(2代目)ジョヴァンニ・アニエッリの妻であったマレッラが死去している。いわば旧世代であるマレッラが他社との経営統合に難色を示していたと仮定すると、彼女の死を機にエルカンが経営統合提案に踏み切ったと読むことができる。

かたやルノーは、ルイ・ルノーとその2人の兄により、フィアットより1年早い1898年に創業された。しかし第2次世界大戦が会社の運命を変える。1940年にドイツ軍によってパリが占領されると、ルノーはナチス・ドイツの管理下に置かれた。すなわち、創業から42年でルノーは純粋な民間企業でなくなったことになる。第2次大戦後に国有化され、ルノー公団となる。

1996年には株式会社化されたが、2019年現在でもフランス政府は15%の株式を保有する筆頭株主である。これは、2018年のカルロス・ゴーン逮捕報道を機会に日本でもたびたび伝えられてきたとおりだ。

フランス政府が絡んだ持ち株会社式の経営統合といえば、2004年のエールフランスとKLMオランダ航空とのものがあるが、こちらは限りなく「官」同士であった。いっぽう今回は、極言すればFCAが「民」で、ルノーは「官」なのである。

今回の経営統合案による新会社のCEOには、フィアット創業家のジョン・エルカンが就任するとされる。

“家風”が違うFCAとルノーがどのように協業していくのかが興味深い。

1986年「アルファ・ロメオ・グループCプロトタイプ」。
1986年「アルファ・ロメオ・グループCプロトタイプ」。拡大
「インノチェンティ・スモール」。2007年撮影。
「インノチェンティ・スモール」。2007年撮影。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト。国立音楽大学ヴァイオリン専攻卒にして、二玄社『SUPER CG』元編集記者、そしてイタリア在住21年と脈絡なき人生を歩んできたものの、おかげで妙に顔が広い。今日、日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして執筆活動に携わると共に、NHKラジオフランス語テキストでも活躍中。10年以上にわたるNHK『ラジオ深夜便』レギュラーリポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも奮闘している。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『カンティーナを巡る冒険旅行』『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(ともに光人社)、電子書籍『イタリア式クルマ生活術』(NRMパブリッシング)など数々の著書・訳書あり。

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