めったなことでは底付きしない

実際のPHCそのものは、新世代のハイドロ……という言葉からイメージするよりは、ずいぶんシンプルな機構である。基本的にはショックアブソーバー=ダンパーだけで完結する技術であり、C5エアクロスの足もとも、見た目にはコイルスプリング&ダンパーによる一般的なサスペンションと変わりない。さらに、完全にメカニカルな機構なのでそれに付随する電子制御システムも存在しない。

PHCはメインダンパーのストロークエンド部分に高減衰のセカンダリーダンパーを内蔵したものだ。そのセカンダリーダンパー=第2のダンパーが、実質的にバンプストッパー役をつとめるのがPHCのキモである。

サスペンションが縮み切った末端のエンド部分に組み込まれるバンプストッパーは通常ウレタンやゴムの部品である。バンプストッパーを乗り心地の微妙なチューニングに使うケースもあるが、いずれにせよ最後の壁となる部品だからそれなりの強度が必要で、どうしても反発力が出る。よって、バンプストッパーに触れるような大入力時には、乗り心地に不快な“底付き感”が出るのは避けられない。

PHCはそんなバンプストッパーの役割を吸収力に優れ(て、理論的には反発力も発生しないとされ)る第2のダンパーに受け持たせることで、サスペンションストロークのエンド領域をゆっくり強力に減衰する。一般的なバンプストッパーのようにストロークを急激にせきとめることがなく、普通に起こりうる路面入力では基本的に底付きしない……というのが、シトロエンの主張するPHCの効能である。

さらにいうと、こうして最後の壁を柔らかく積極的に使えるようになることで、その手前を担うメインのバネレートやダンパー減衰力も遠慮なく(?)柔らかくできるので、結果として“魔法のじゅうたん”のごとき快適な乗り心地が実現できるという理屈である。そんなPHCの技術はもともと、1994年のパリダカで優勝した「ZXラリーレイド」で投入されて以降、その後2000年代から現在にいたるまでの同社のWRCカーに採用されている技術をベースとしているという。

「シトロエンPHC」のイメージ図。メインダンパーの内部にもうひとつダンパーが備わっている。
「シトロエンPHC」のイメージ図。メインダンパーの内部にもうひとつダンパーが備わっている。拡大
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