メルセデス・ベンツA200d(FF/8AT)
志あってのフツー 2019.06.18 試乗記 スタイリッシュなデザインや、AI技術を使ったインフォテインメントシステムで話題の4代目「メルセデス・ベンツAクラス」。最新のディーゼルモデルを走らせてみると、既存のガソリンターボ車とは異なる“オトナ”なドライブフィールが伝わってきた。あっと言わせた初代を思う
4代目となったメルセデス・ベンツのAクラスは「普通にいいクルマ」である。なぜシンプルに「いいクルマ」と言わないかというと、自分のような“ちょっと古い”クルマ好きは、新しいAクラスの素晴らしい完成度に感心しつつも、どこか「普通のクルマになっちまったなァ」という気分が拭えないからだ。
新型Aクラスに試乗させてもらって昔話をするのもナンだが、1997年に初代Aクラスが登場したときは、そりゃもう大騒ぎだった。あのベンツさまが、コンパクトカー市場に殴り込んでくる! それも単なるFFハッチではない。独特のフォルムに二重床という新機軸が、いかにも意味ありげ。上下フロアの間には水素(エタノール)タンクが置かれ、近い将来、燃料電池バージョンが実用化される……てなうわさがまことしやかにささやかれた。
「さすがはメルセデス!」と周囲をうならせたのが、わざわざ平たいエンジン(ユニット)を開発したこと。スペースを取らないうえ、万が一の衝突時にはサンドイッチ構造の床下に滑り落ちるので、乗員がいるキャビンに飛び込まない。いかにもプレミアムメーカーらしい手の込んだアプローチだった。
そんな安全性の高さがジマンのAクラスではあったが、スウェーデンのメディアが実施したエルクテスト(ダブルレーンチェンジ)で車両自体がひっくり返るという予想外の出来事が起き、すっかり出鼻をくじかれてしまった。心ないユーザーのひとりである自分などは、Aクラスの高いフロアに足を踏み入れるたび、「重心の高さ」という言葉が頭に浮かんだものです。
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