純粋に速さを追求できた、よき時代の911

そんな進化のキモが、まずは抜本的に作り直されたボディーに宿っていたことは間違いない。よく知られているように、997型に対してアルミ材の使用範囲を飛躍的に増やすなどして、剛性を高めつつも大幅な軽量化へとトライしたのが991型のボディーの特徴。さらに、「モータースポーツからの要請に基づいて」との説明とともに、ホイールベースが一挙に100mmも延長されたこともディメンション変化の見どころだった。

そんな991型のモデルライフをたどってみると、「GT3」の追加とともにリアのアクティブステアリングが日の目を見たこともトピックだ。知ってのとおり、911のバリエーション中、最もサーキット走行に強くフォーカスされたこのモデルでは、軽量化というのは開発時の最重要課題のひとつ。そのGT3をして、“速さ”獲得のためにはある程度の重量ハンディを背負うことも厭(いと)わないというのは、PDKやリアアクスルステアリングを標準採用化したこの世代で明確になった、新たな開発方針であったようにも受け取れる。

そして、そんな991型を踏み台に生まれた992型が、さらに“速さ”と“走りの質感”に磨きを掛けた存在であることは、すでに自身で確認した事柄である。一方、新世代のモデルには、この先の電気モーター搭載を見据え、そのための空間を確保した新たなトランスミッションが採用されるなど、歴代モデルが常に追い求めてきた“走りの追求”とは異なるベクトルでの、この先の時代を生き残っていくことを念頭に置いた開発の跡も見え隠れする。

そうした“時代の要請”への適合は、あるいはポルシェの技術者が「本来思うところ」とは、必ずしもベクトルが一致していないのかもしれない。そうした点では、より理想に向けたクルマづくりが行えたのは、もしかすると992型よりも991型のほうだったのではないだろうか……。と、そんなことを考える今日このごろなのである。

(文=河村康彦/写真=ポルシェ/編集=堀田剛資)

アルミ材の使用範囲を広げるなど、重量軽減のためにさまざまな方策が取り入れられた991型。従来モデルより、45kgの軽量化を実現していた。
アルミ材の使用範囲を広げるなど、重量軽減のためにさまざまな方策が取り入れられた991型。従来モデルより、45kgの軽量化を実現していた。拡大
475psの高出力エンジンを搭載した「GT3」(前期型)。トランスミッションは7段PDKのみで、リアアクスルステア(後輪操舵機構)が採用されていた。
475psの高出力エンジンを搭載した「GT3」(前期型)。トランスミッションは7段PDKのみで、リアアクスルステア(後輪操舵機構)が採用されていた。拡大
後期型(991 II型)からダウンサイジングターボエンジンが採用されたことも、この世代の「911」の大きなトピックである。写真は「カレラS」用のエンジンで、3リッターの排気量から420psの最高出力を発生した。
後期型(991 II型)からダウンサイジングターボエンジンが採用されたことも、この世代の「911」の大きなトピックである。写真は「カレラS」用のエンジンで、3リッターの排気量から420psの最高出力を発生した。拡大
991型のフィナーレを飾る「スピードスター」。1948台の限定モデルで、「GT3」ゆずりのシャシーとパワートレインに、専用のオープンボディーを組み合わせた、走る楽しさを追求したモデルとなっている。
991型のフィナーレを飾る「スピードスター」。1948台の限定モデルで、「GT3」ゆずりのシャシーとパワートレインに、専用のオープンボディーを組み合わせた、走る楽しさを追求したモデルとなっている。拡大
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