スーパーカーは逆戻りが必要

それは、既報のように、V12自然吸気+マミュアルトランスミッションを持ち、かつてマーレイ氏がブラバムF1で導入した「ファンカー」機構を搭載した、重量わずか980kgの3人乗りミドシップスーパーカーだという。

マーレイ氏は「最後のアナログ・スーパーカー」と語ったというが、私としては、V12自然吸気+マニュアルというだけで涙が出る。ああ、さすがマーレイ氏はわかってらっしゃる!

スーパーカーは明らかに行き止まりだ。それでも前へ前へと走り続け、どんどん複雑かつ重くなり、非現実的なほどパワフルになり、速くてラクチンになり、そして高価になっている。

まぁ、マーレイ氏の「T.50」も3億円以上というから、そりゃもう手も足も小指の先も出ませんが、コンセプトを聞いただけで目頭が熱くなる。

私は、いつかスーパーカーは逆戻りが必要になると思っている。今はまだ世界中の富裕層とともに前へ前へと走り続けているが、いつかバブルははじけ、恐竜のごとく絶滅するだろう。

そんな日が来る前に、フェラーリは世俗に反旗をひるがえすべきではないか。小型軽量の、「328」みたいな(スイマセン)スーパーカーに回帰すべきではないか!? 328が非現実的なら458イタリアのコンパクト版(マニュアル)みたいのとか。もちろん全部とは言いません。1モデルくらいそういうのをつくってもよくないか。

おそらく心の中では、誰もがそれを望んでいるんじゃないか。でも、「いまさらムリだよな……」とあきらめているだけじゃないか。そんなマシンが登場したら、世界中が熱狂し喝采するんじゃないか!?

フェラーリ社として、廉価モデルをいまさらつくったところで、ビジネス上の利益はないどころかマイナスだろう。しかし、だからこそつくってもらいたい。

我々が望んでいるのは、決してSF90ストラダーレではない! 

あ、正確には「我々」ではなく、単に私が望んでいるだけですが。

(文=清水草一/写真=池之平昌信/編集=大沢 遼)

ゴードン・マーレイ氏。(ゴードン・マーレイ・デザインのホームページより)
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「ゴードン・マーレイT.50」のデザインイメージ。
「ゴードン・マーレイT.50」のデザインイメージ。拡大
フェラーリ328GTS(写真=池之平昌信)
フェラーリ328GTS(写真=池之平昌信)拡大
清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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