事前の登録はネックになりうる

実にすばらしい仕組みのようだが、世の中、便利と不便は紙一重。欠点はないのだろうか?

パーフェクトリー キーレスは、車両側に組み込まれた「ユーザー(正確にはスマホ)を認識する機器」と「認識されるスマホ」とで成り立つ。前提条件として、そのスマホでドアの解錠やエンジンの始動が可能になるよう、車載器にスマホを登録しておく必要がある。

その手続きを経なければ? たとえ本当のオーナーであっても門前払いになる。もし機種変更したら、新たな端末を再度登録しなければならない。

家族など複数のユーザーがクルマを共有する場合や、友人とクルマの貸し借りをするときも、個々のスマホの登録はマスト。ボッシュは「インターネットを使ってキーの“権利”を授受することで、広くカーシェアサービスにも活用できる」とアピールするが、これも同様に、クルマを使う前に一度は実車に接してスマホそのものの登録作業をしなければならない。いや、それは、あまりにも面倒なような……。

この点、石塚さんも「パブリックなカーシェアでは、やや大きなハードルになりえますね……」と苦笑いせざるをえない。認証のプロセスを簡略化(=セキュリティーレベルを低下)させればカーシェアも容易になるだろうが、それはパーフェクトリー キーレスの存在意義に関わる。本末転倒というものだろう。

それにパーフェクトリー キーレスには、「スマホ頼みになる」というリスクがつきまとう。もし、スマホの電池がなくなったら? その点ボッシュでは、バックアップとして前述のNFCもセットにすることを考えているそうだが、不安は不安だ。それこそスマホをなくす/落とすという事態になれば、マイカー盗難のリスクも高まる。その際は、コールセンターに連絡すれば即座にキーを無効にしてもらえるなど、もちろんサポート体制は万全だが。

とはいえ、スマホはみんなが持っているのだし、スマホのキー化は確実に進むはず。今後、どれくらいのスピードで普及し、いつごろ“常識”になるのだろうか?

「ボッシュとしても、わかりません。でも多くのユーザーにとってメリットがあるでしょうから、ひとたび世の中で『あ、それいいね!』と思われるようになったら爆発的に普及する可能性があります」というのが、石塚さんの予想するところである。

エンブレム付きのキーに憧れる“昔ながらのクルマ好き”にとっても、無視できない新技術には違いない。

(文と写真と編集=関 顕也)

クルマの使用権は、インターネットを経由して他人に付与することができる(写真はその“シェア”のイメージ)。ただし、実際に車両の解錠やエンジン始動を行うためには、個々のスマートフォンそのものを車両の受信機に認識(登録)させる必要がある。
クルマの使用権は、インターネットを経由して他人に付与することができる(写真はその“シェア”のイメージ)。ただし、実際に車両の解錠やエンジン始動を行うためには、個々のスマートフォンそのものを車両の受信機に認識(登録)させる必要がある。拡大
ユーザーの識別には、スマートフォン内のチップが使われる。「違う人」と判断されれば、「キーが見つかりません」のメッセージとともに拒絶されることとなる。
ユーザーの識別には、スマートフォン内のチップが使われる。「違う人」と判断されれば、「キーが見つかりません」のメッセージとともに拒絶されることとなる。拡大
「パーフェクトリー キーレス」は技術的に“後付け”できないわけではないが、いまのところは新車装着アイテムとして開発されている。市場のニーズが高まれば将来的なアフターパーツ化もありうるものの、車両側のシステム組み込みにコストがかかるため、実現の可能性は低いと見られている。
「パーフェクトリー キーレス」は技術的に“後付け”できないわけではないが、いまのところは新車装着アイテムとして開発されている。市場のニーズが高まれば将来的なアフターパーツ化もありうるものの、車両側のシステム組み込みにコストがかかるため、実現の可能性は低いと見られている。拡大
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