ユーザーはEVに“未来”を求めていない

明照寺:少し前までは、デザイナーにとってEVは、「未来を示さないといけないクルマ」という強迫観念がありました。デザイナーだけじゃなく、会社としてもそういうものを期待してましたし。実際、「BMW i3」が出たときは単純にすごいって思いました。でも、市場的にはあんまり受け入れられなかった。EVが未来的でなくてはならないっていうのは、作り手のエゴだったのかもしれません。i3は個人的にすごく“いいもの感”があって、好きなデザインなんですけど。

永福:私もいまだに、全EV中のベストデザインだと思ってます。根こそぎ新しくて、機能を感じさせて、美しかった。

明照寺:ただ、ドアを観音開きにする必要はなかったんじゃないかな。テスラがヒットしたのは、普通のクルマだったからかもしれません。テスラのモデルSは、サイズの大きい普通のセダンでしたよね。そのあたりから、今後のEVの方向性が見えてきたんじゃないでしょうか。ユーザーはEVにも、作り手が思っている以上に「普通のクルマ」を求めてるんだなと。

ほった:仮に私がEVを買うとしても、普通のデザインのやつを選びたいです。

永福:そうかなぁ。断然i3だけどなぁ。

ほった:それは、いわゆるカーマニアの意見でしょう。

明照寺:その流れからか、アウディにしろメルセデスにしろ、至って普通のSUVみたいなEVを発表しましたよね。

永福:あの2台には全然面白みを感じません。

明照寺:でも、ユーザーの嗜好はたぶん“そっち”なんですよ。例えばこちらのコンセプトカー、「メルセデス・ベンツEQC」なんですけど、この差し色的に使われた青、これすらも、今やちょっと古臭く見える感じがしますね。少し前までは、エコカーというと総じて青を使いたがる傾向がありましたけど。

永福:ありましたよねぇ。青はエコ、すなわち先進的なエリートのシルシ! というような。

明照寺:そういうアクセントカラーを使わないという部分も含めて、Iペースのデザインは非常に時流に乗ってるし、プロポーションもスポーティーでいいんじゃないかと思います。

(文=永福ランプ<清水草一>)
 

未来感を前面に押し出して登場した「BMW i3」だが、市場の反応はいまひとつだった。
未来感を前面に押し出して登場した「BMW i3」だが、市場の反応はいまひとつだった。拡大
テスラ初のヒット作となった大型セダン「モデルS」。
ほった:「先進的なイメージのテスラですけど、最近出てきた新型『ロードスター』といい、クルマのデザインそのものは結構古典的というか、スタンダードなんですよね」
テスラ初のヒット作となった大型セダン「モデルS」。
	ほった:「先進的なイメージのテスラですけど、最近出てきた新型『ロードスター』といい、クルマのデザインそのものは結構古典的というか、スタンダードなんですよね」拡大
アウディ初の量販EVとなる予定の「e-tron」。ご覧の通り、そのデザインは至って普通のSUVである。
アウディ初の量販EVとなる予定の「e-tron」。ご覧の通り、そのデザインは至って普通のSUVである。拡大
プロトタイプ時代の「メルセデス・ベンツEQC」。
ほった:「今となっては青いアクセントが“時代を感じさせるデザイン”になっちゃってますね」
プロトタイプ時代の「メルセデス・ベンツEQC」。
	ほった:「今となっては青いアクセントが“時代を感じさせるデザイン”になっちゃってますね」拡大
内燃機関を搭載したクルマでは不可能なスタイリングを除くと、「Iペース」にEVであることを過度に主張するような部分はない。
明照寺:「青や緑のアクセントカラーもそうですが、もうユーザーは、EVにことさら未来的だったり、エコだったりといったイメージを求めてはいないのかもしれません」
内燃機関を搭載したクルマでは不可能なスタイリングを除くと、「Iペース」にEVであることを過度に主張するような部分はない。
	明照寺:「青や緑のアクセントカラーもそうですが、もうユーザーは、EVにことさら未来的だったり、エコだったりといったイメージを求めてはいないのかもしれません」拡大
明照寺 彰(めいしょうじ あきら)

明照寺 彰(めいしょうじ あきら)

さまざまな自動車のデザインにおいて辣腕を振るう、現役のカーデザイナー。理想のデザインのクルマは「ポルシェ911(901型)」。

永福ランプ(えいふく らんぷ)
大乗フェラーリ教の教祖にして、今日の自動車デザインに心を痛める憂国の士。その美を最も愛するクルマは「フェラーリ328」。

webCGほった(うぇぶしーじー ほった)
当連載の茶々入れ&編集担当。デザインに関してはとんと疎いが、とりあえず憧れのクルマは「シェルビー・コブラ デイトナクーペ」。

あなたにおすすめの記事
関連記事
  • ジャガーIペース ファーストエディション(4WD)/IペースSE(4WD)【試乗記】 2019.4.4 試乗記 いよいよ日本に導入された、ジャガーの100%電気自動車(EV)「Iペース」。エンジンを搭載しないEVならではのスタイリングをまとうニューモデルは、スポーツカーを出自とするジャガーの名に恥じないクルマに仕上がっていた。
  • ジャガーIペースHSE(4WD)【試乗記】 2019.6.3 試乗記 欧州カー・オブ・ザ・イヤーにも輝いたジャガーのEV「Iペース」は、他のEVや従来のジャガー車とどう違う? 市街地や高速道路を走らせてわかった“エレクトリック・パフォーマンスSUV”の乗り味を報告する。
  • 第40回:ジャガーIペース(前編) 2019.7.10 カーデザイナー明照寺彰の直言 ジャガーからブランド初の100%電気自動車(EV)「Iペース」が登場。SUVのようにも、ハッチバックのようにも見える400psの快速EV。そのデザインに込められた意図とは? EVデザインのトレンドを踏まえつつ、現役の自動車デザイナー明照寺彰が語る。
  • BMW X5 xDrive35d Mスポーツ(4WD/8AT)【試乗記】 2019.7.4 試乗記 BMWのSAV(スポーツアクティビティービークル)「X5」の新型がいよいよ日本に上陸。世の中にプレミアムSUVというジャンルを生み出した、いわばパイオニアというべきモデルの最新バージョンは、今もなおカテゴリーリーダーといえる実力を備えているのだろうか。
  • フィアット500Xクロス(FF/6AT)【試乗記】 2019.6.19 試乗記 フィアットのコンパクトSUV「500X」が、デビューから5年を経てマイナーチェンジを受けた。エクステリアデザインに手が加わるとともに、新世代の1.3リッター直4ターボエンジンが採用されたイタリアンSUVの出来栄えをチェックする。
ホームへ戻る