自分より重いクルマとの衝突でも安全性を確保

軽いクルマは衝突で不利――。この厳然たる事実に挑んでいるのがホンダである。

ホンダは軽自動車の車体設計に、自己保護性能の向上と相手車両への攻撃性の低減を両立する「コンパティビリティー」という考え方を大々的に取り入れている。筆者が思い出すのは、軽自動車規格が現在の排気量660cc、全長×全幅=3.4×1.48mに変更された1998年に発売された「ライフ」(1971年発売のモデルを初代として3代目)である。

同モデルは、軽自動車として初めて64km/hでの40%オフセット衝突試験(車両前面の40%がバリアーに衝突する衝突形態)に対応した車体構造を採用し、同じ軽規格改定のタイミングで新型車を発表した他社を驚かせた。というのも、当時の法規で定められていた衝突試験の方法は、オフセット衝突よりも車体への負担が小さいフルラップ衝突で、しかも衝突速度は50km/hだったからだ。当時、別の自動車メーカーのエンジニアに、ホンダの新型車が64km/hでのオフセット衝突に対応していることを伝えたら「本当ですか?」と心底驚いた表情をしていたのを記憶している。

そして、その5年後に発売した4代目ライフで、ホンダはこの衝撃吸収ボディーをさらに進化させた。このときに取り入れた新たなコンセプトが、コンパティビリティー対応ボディーである。従来の衝撃吸収ボディーでは、エンジンの左右を走るサイドメンバーで主に衝撃を吸収していたのだが、自分の車両と相手の車両のサイドメンバー同士がうまく衝突すれば効率的に衝撃を吸収できるものの、もしフレーム同士がすれ違ってしまうと衝撃が吸収できないばかりか、最悪の場合サイドフレームが相手車両に突き刺さってしまい、被害を大きくしてしまう。

そこでホンダのコンパティビリティー対応ボディーでは、相手車両と自車両でフレームのすれ違いが起きにくいよう、エンジンルームまわりのいくつかのフレームで衝撃を分散・吸収すると同時に、それぞれのフレーム同士を結合するメンバーを配置した。この構造だと、たとえサイドメンバーの位置がずれても他のメンバーに当たり、すれ違いが起きにくくなる。この結果、重量が2tクラスまでの乗用車と正面衝突した場合で、エンジンルーム部分での衝突エネルギーの吸収量を約50%増加させたことに加え、相手車両にも分散して荷重を伝えることで、加害性も低減させたのだ。

衝突実験場に展示されていた、現行型「N-BOX」のホワイトボディー。フロントに張り巡らされた、複雑なメンバーの構造に注目。
衝突実験場に展示されていた、現行型「N-BOX」のホワイトボディー。フロントに張り巡らされた、複雑なメンバーの構造に注目。拡大
1998年に登場した3代目「ライフ」。法規で求められるより厳しい要件にも対応する衝突安全性が確保されていた。
1998年に登場した3代目「ライフ」。法規で求められるより厳しい要件にも対応する衝突安全性が確保されていた。拡大
2003年登場の4代目「ライフ」。衝突エネルギーを効率よく分散・吸収することで自己保護性能を高めるとともに、相手車両への攻撃性も低減する「コンパティビリティー対応ボディー」を採用していた。
2003年登場の4代目「ライフ」。衝突エネルギーを効率よく分散・吸収することで自己保護性能を高めるとともに、相手車両への攻撃性も低減する「コンパティビリティー対応ボディー」を採用していた。拡大
4代目「ライフ」のコンパティビリティー対応ボディーの解説。フロントの広い範囲にメンバーが巡らされており、オフセット衝突でも的確に衝撃を受け止めるとともに、荷重を分散し、エネルギーを吸収する構造となっていた。
4代目「ライフ」のコンパティビリティー対応ボディーの解説。フロントの広い範囲にメンバーが巡らされており、オフセット衝突でも的確に衝撃を受け止めるとともに、荷重を分散し、エネルギーを吸収する構造となっていた。拡大
4代目「ライフ」のボディー骨格。
4代目「ライフ」のボディー骨格。拡大
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