圧縮比を大幅に向上させたOHV

初期のレシプロエンジンでは、SV(サイドバルブ)と呼ばれる機構が採用されていた。この形式では、シリンダーの外側にバルブが上向きに配置されており、クランクシャフトのすぐ近くにあるカムシャフトにより直接駆動される。どうしても燃焼室が横に広がる形になり、圧縮比を上げることが難しい。シンプルなため丈夫で、ヘッドをコンパクトにできるというメリットはあったが、高出力を得ることはできなかった。

OHV(オーバーヘッドバルブ)は、その名が示す通りバルブがヘッドの上にあり、SVとは逆に下向きに配置されている。カムシャフトはシリンダーの横にあり、プッシュロッドを介してロッカーアームを押し上げる。テコの原理によって作用の向きを反転させることで、バルブが押し下げられる仕組みだ。燃焼室をコンパクトにすることが可能になり、圧縮比を大幅に向上させることができた。ただ、OHVは長いプッシュロッドを持つため、慣性重量と熱変形、弾性変形の問題を抱えていた。

1950年代には、クライスラーが半球形燃焼室を持つV8のHEMIエンジンを採用して高出力のマッスルカーを登場させ、レースでも華々しく活躍する。しかし、1970年代に入ると排ガスや燃費の面で時代に対応することができず姿を消してしまった。OHVはすっかり時代遅れになったと思われたが、アメリカのゼネラルモーターズは依然としてこの形式のエンジンを採用しており、またクライスラーも21世紀になって新世代のHEMIエンジンを発表し、「300C」などに搭載して高評価を受けた。

OHC(オーバーヘッドカムシャフト)は、バルブだけでなくカムシャフトもヘッドの上部に配置する形式である。クランクシャフトからギアやチェーンでカムシャフトを駆動し、カムがバルブかロッカーアームを押し下げる。プッシュロッドを省いたことで高回転化が可能になり、さらに出力を上げることができるようになった。

「メルセデス35PS」に搭載された直列4気筒エンジン(1901年)。燃焼室の左右に吸排気バルブを持ち、それぞれを個別のカムシャフトで動かすという、SVエンジンとしては非常に凝った構造をしていた。
「メルセデス35PS」に搭載された直列4気筒エンジン(1901年)。燃焼室の左右に吸排気バルブを持ち、それぞれを個別のカムシャフトで動かすという、SVエンジンとしては非常に凝った構造をしていた。拡大
OHVはシリンダーの横(V型エンジンでは左右シリンダーの間)に備わるカムシャフトからプッシュロッドを伸ばし、シリンダー上部のバルブを動かす動弁機構のこと。写真は2014年型「シボレー・コルベット」の「LT1」エンジン。
OHVはシリンダーの横(V型エンジンでは左右シリンダーの間)に備わるカムシャフトからプッシュロッドを伸ばし、シリンダー上部のバルブを動かす動弁機構のこと。写真は2014年型「シボレー・コルベット」の「LT1」エンジン。拡大
1963年に登場したクライスラーの第2世代HEMIエンジン。V型OHVでありながら、プッシュロッドやロッカーアームの取り回しを工夫することで、クロスフローおよび半球形の燃焼室を実現。一般的なOHVより高い燃焼効率を実現した。
1963年に登場したクライスラーの第2世代HEMIエンジン。V型OHVでありながら、プッシュロッドやロッカーアームの取り回しを工夫することで、クロスフローおよび半球形の燃焼室を実現。一般的なOHVより高い燃焼効率を実現した。拡大
1986年に登場した2代目「ホンダ・シティ」のOHCエンジン。シリンダー上部の1本のカムシャフトで、ロッカーアームを介して吸排気バルブを動かす。
1986年に登場した2代目「ホンダ・シティ」のOHCエンジン。シリンダー上部の1本のカムシャフトで、ロッカーアームを介して吸排気バルブを動かす。拡大
あなたにおすすめの記事
新着記事