DOHCを大衆化した「ジュリエッタ」

このカムシャフトを2本に増やしたのがDOHC(ダブルオーバーヘッドカムシャフト)である。直列エンジンの場合に2本なのであり、V型や水平対向の場合は4本ということになる。DOHCの普及により、OHCはSOHC(シングルオーバーヘッドカムシャフト)と呼ばれるのが普通になった。DOHCは吸気側と排気側のバルブを別のカムシャフトで駆動するので、シリンダーヘッドの設計の自由度が大幅に上がる。高回転化もしやすい。反面、機構が複雑になり、重量が増加するという弱点もある。

SV、OHV、SOHC、DOHCと、前の形式を完全に淘汰(とうた)する形でエンジンが進化してきたわけではない。それぞれに長所と短所があり、用途に合わせて使い分けられてきた。DOHCも決して新しい技術ではなく、20世紀初頭にはすでに考案されている。ただ、複雑で手の込んだ機構であり、戦前はレーシングカーか高級スポーツカーにしか使われなかった。

レースで積極的にDOHCを採用したのが、アルファ・ロメオだった。ヴィットリオ・ヤーノが率いるエンジニアチームがつくり上げた「P2」は、戦前のグランプリマシンを代表する名車である。直列8気筒1987ccのDOHCエンジンを搭載し、スーパーチャージャーの力を借りて140馬力の出力を得ていた。1924年から30年にかけ、各地のGPやタルガ・フローリオなどのレースで勝利を重ねた。ヤーノはDOHCエンジンを搭載した市販のスポーツカーもつくっている。

戦後、アルファ・ロメオは少量生産の超高級車メーカーというスタイルを捨て、量産車メーカーとして再出発する。それでもDOHCエンジンの伝統は守られた。1954年、アルファ・ロメオは小型ではあるが高性能なモデルを発表した。それが「ジュリエッタ」である。搭載されたエンジンは1290ccという小排気量だったが、クーペボディーのスプリントで165km/h、ベルリーナで140km/hの最高速を誇った。

今日の自動車用エンジンに採用される、主要な動弁機構の図解。
今日の自動車用エンジンに採用される、主要な動弁機構の図解。拡大
可変バルブ機構や気筒休止システムの採用、燃料噴射の直噴化など、絶え間なく進化を続けてきたGMのOHVエンジン。2020年型「シボレー・コルベット」にも、OHVのエンジンが搭載される。
可変バルブ機構や気筒休止システムの採用、燃料噴射の直噴化など、絶え間なく進化を続けてきたGMのOHVエンジン。2020年型「シボレー・コルベット」にも、OHVのエンジンが搭載される。拡大
1954年に登場した「アルファ・ロメオ・ジュリエッタ」。まずはクーペの「スプリント」から市場投入された。
1954年に登場した「アルファ・ロメオ・ジュリエッタ」。まずはクーペの「スプリント」から市場投入された。拡大
「ジュリエッタ」に搭載された1290ccの直4 DOHCエンジン。
「ジュリエッタ」に搭載された1290ccの直4 DOHCエンジン。拡大
あなたにおすすめの記事
新着記事