“軍用車両”あり「タイプ2キャンパー」あり

島はアフリカからの熱風「シロッコ」をはじめとする海風にさらされているので、クルマは洗っても洗ってもたちまち砂ぼこりに覆われる。したがって、写真Aのように、「Lavami, Ti prego!(私を洗って、お願い!)」と、いたずら書きされる状態になる。

狭い小路が続く島で最も便利なモビリティーといえば、三輪トラック「アペ」である。第574回で紹介したジーリオ島と比較すると、エルバ島の広さは9倍以上ある。したがって、アペ密度はジーリオ島よりも低いが、それでも村を走り回っている姿を頻繁に見かける。

貨物運搬用だけでなく、「看板」としても用いられている(写真B)。念のために記しておくと、こちらはただ駐車してあるだけだ。イタリアは景観規制が厳しく、容易に看板を設置することができないので、維持費が原付き並みのアペ+看板は、うまい手なのである。なお、走らないばかりか、東京における高収入求人情報を発信するアドトラックのようなテーマ音楽も流していない。

宣伝カーということで、もうひとつ。「鉱山サファリツアー」のアイキャッチ兼移動車として使用されている「イベコVM90」(写真C)も発見した。同車はイタリア軍の払い下げ品として、状態や年式にもよるが、2万ユーロ(約237万円)程度で流通している。うまくすれば「スズキ・ジムニー」の新型を買うよりも安い値段で、9人乗りの本格ミリタリービークルが手に入るわけだ。イタリアでは普通免許で運転できるのも魅力である。

日本車で重宝されているものといえば、そのジムニー(写真D)である。オフロードが多いためだ。

また、本土ではとっくに絶滅してしまったモデルも、大切に使われていることがある。その一例は「マツダ121(日本名:オートザム・レビュー)」(写真E)だ。そのデザインは若づくりだが、車齢は20年を超えていることになる。

ここまではいずれも実用車だが、エンスージアストのものと思われるクルマたちにも出会う。写真Fは、夕刻ポルト・フェッライオの海岸通りに現れて通行人の注目を浴びていた「フィアット126」だ。ステッカーなどから判断して、地元エンスージアストによるものである。

「フォルクスワーゲン・タイプ2」(T2)は、4日間の滞在中、地元オーナー所有と思われる個体のほか、外国ナンバーなどを含めて計4台を確認した。長年ドイツ人に愛されてきたエルバ島ゆえ、風景にタイプ2が加わるだけで、見る者に往年を彷彿(ほうふつ)とさせる(写真G、H)。

ところでドライブの途中に寄りたくなるものといえば、トイレである。そのトイレで、とんでもないものを発見した。

写真A。「私を洗って、お願い!」の落書きが。島の玄関口、ポルト・フェッライオで。
写真A。「私を洗って、お願い!」の落書きが。島の玄関口、ポルト・フェッライオで。拡大
写真B。島内ボート&シュノーケリングツアーのアイキャッチにもアペが。
写真B。島内ボート&シュノーケリングツアーのアイキャッチにもアペが。拡大
写真C。鉱山サファリツアーの「イベコVM90」。カーポリーヴェリにて。
写真C。鉱山サファリツアーの「イベコVM90」。カーポリーヴェリにて。拡大
写真D。島で最も活躍している日本車といえば、恐らく「スズキ・ジムニー」だろう。スペインのサンタナ・モーター製車両も時折見られる。
写真D。島で最も活躍している日本車といえば、恐らく「スズキ・ジムニー」だろう。スペインのサンタナ・モーター製車両も時折見られる。拡大
写真E。本土ではとっくに絶滅してしまったモデルも、大切に使われていることがある。これはその一例。「マツダ121(日本名:オートザム・レビュー)」が。
写真E。本土ではとっくに絶滅してしまったモデルも、大切に使われていることがある。これはその一例。「マツダ121(日本名:オートザム・レビュー)」が。拡大
写真F。夕刻、ポルト・フェッライオの海岸通りに現れて注目を浴びていた「フィアット126」。
写真F。夕刻、ポルト・フェッライオの海岸通りに現れて注目を浴びていた「フィアット126」。拡大
写真G。こちらも散歩中に脇を通り過ぎたものを撮影したため、クオリティーに難があるが、「フォルクスワーゲン・タイプ2」(T2)のほろ付きトラック。島の愛好家と思われる。
写真G。こちらも散歩中に脇を通り過ぎたものを撮影したため、クオリティーに難があるが、「フォルクスワーゲン・タイプ2」(T2)のほろ付きトラック。島の愛好家と思われる。拡大
写真H。外国人観光客の「タイプ2キャンパー」(T2)が下船してきた。
写真H。外国人観光客の「タイプ2キャンパー」(T2)が下船してきた。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト。国立音楽大学ヴァイオリン専攻卒にして、二玄社『SUPER CG』元編集記者、そしてイタリア在住21年と脈絡なき人生を歩んできたものの、おかげで妙に顔が広い。今日、日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして執筆活動に携わると共に、NHKラジオフランス語テキストでも活躍中。10年以上にわたるNHK『ラジオ深夜便』レギュラーリポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも奮闘している。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『カンティーナを巡る冒険旅行』『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(ともに光人社)、電子書籍『イタリア式クルマ生活術』(NRMパブリッシング)など数々の著書・訳書あり。

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