3強に次ぐ中団チームのトップ、マクラーレンの躍進

名門の復権、とまではいかないが、開幕前にこれほどマクラーレンが躍進するとは誰も思っていなかったのではないだろうか。

何しろドライバーの1人は、前年F2タイトルを取り損ねた19歳のルーキー、ランド・ノリス。もう1人も移籍してきたばかりで、まだ表彰台の経験もない24歳のカルロス・サインツJr.。実績もなく、またチームになじみもないドライバーラインナップに加えて、近年チームは苦戦続き。果たしてマクラーレンの今季は大丈夫なのか?……などという心配は、早々に無用であることが分かった。

ノリスは、開幕戦オーストラリアGPでいきなり予選8位を取ると、トップ10グリッド以内に12戦で8回も入り、入賞も最高位6位を筆頭に5回記録するなど大活躍。GP5年目のサインツJr.も負けじと奮闘し、2人が前半戦だけで稼いだポイントは82点と、昨季1年で集めた62点を優に超えてしまった。244点でランキング3位につけるレッドブルには遠く及ばないものの、5位トロロッソには39点ものマージンを築いており、3強に次ぐ中団チームのトップに君臨している。

この躍進の背景には、チームの組織改革がある。マクラーレンを強豪に育て上げたロン・デニスを追い出した後、チームのボスとなったザック・ブラウンCEO。その頼れる右腕として、この5月からアンドレアス・ザイドルがF1マネージングディレクターに就任した。

2017年までポルシェの世界耐久選手権LMP1プログラムで陣頭指揮を執っていたザイドルは、かつてBMWザウバーなどでF1経験も積んだ人物。モータースポーツを熟知し、しがらみもない彼は、マクラーレンの悪名高き“マトリクス型組織構造”を捨て去るなど手腕を発揮し始めている。

さらにトロロッソから引き抜いた気鋭のデザイナー、ジェームス・キーも3月からチーム入りを果たしており、こうしたリストラクチャリングは現在も進行中である。近年の停滞がマネジメントを巡る政治論争を発端としていたことを考えれば、新たなトップ人事が組織に落ち着きをもたらし、チームの士気を高めるであろうことは想像に難くない。

マクラーレンは、7月にノリスとサインツJr.の来季残留を発表。この早々の決断は、チームの未来をこの若い2人に託してみよう、という決意の表れであるとともに、元チャンピオンのアロンソや、デニス時代の輝かしい戦績という“過去の名声”から解き放たれたことを意味するのではないだろうか。復活の道を歩み始めた“かつての名門”、その行く末に刮目(かつもく)しないわけにはいかない。

2019年のF1は、9月1日の第13戦ベルギーGPで後半戦をスタートさせる。

(文=柄谷悠人/写真=メルセデス・ベンツ、レッドブル・レーシング、フェラーリ、マクラーレン/編集=関 顕也)

マクラーレンから今季デビューしたランド・ノリス(写真前)。現役最年少19歳ながら、予選Q3進出の常連となり、チームのコンストラクターズランキング4位に貢献している。チームメイトのカルロス・サインツJr.とともに来季残留することが決まっている。(Photo=McLaren)
マクラーレンから今季デビューしたランド・ノリス(写真前)。現役最年少19歳ながら、予選Q3進出の常連となり、チームのコンストラクターズランキング4位に貢献している。チームメイトのカルロス・サインツJr.とともに来季残留することが決まっている。(Photo=McLaren)拡大
ロン・デニスを追い出した後のマクラーレンのかじ取り役を任されていたザック・ブラウン(写真右)に、強力な助っ人が加わる。ポルシェの世界耐久選手権LMP1プログラムで陣頭指揮を執っていたアンドレアス・ザイドル(同左)がF1マネージングディレクターに就任。経験豊富なリーダーを中心に、組織改革を行っている最中だ。(Photo=McLaren)
ロン・デニスを追い出した後のマクラーレンのかじ取り役を任されていたザック・ブラウン(写真右)に、強力な助っ人が加わる。ポルシェの世界耐久選手権LMP1プログラムで陣頭指揮を執っていたアンドレアス・ザイドル(同左)がF1マネージングディレクターに就任。経験豊富なリーダーを中心に、組織改革を行っている最中だ。(Photo=McLaren)拡大
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