シボレー・コルベット グランスポーツ クーペ(FR/8AT)
最後にして究極 2019.08.23 試乗記 ついにミドシップの新型が発表された「シボレー・コルベット」。“最後のFR”となることが確定した現行モデルとのドライブを通し、アメリカ伝統のスーパースポーツが革新の道を選んだ理由と、今日に至るコルベットの歴史に思いをはせた。2019年7月18日の衝撃
さる7月のこと、8代目となるC8=新型コルベットの概要が発表された。アルミスペースフレームで構成されるリアミドシップパッケージ、そしてコイルオーバーのサスと、これまで半世紀以上にわたりかたくなに守り続けてきたエンジニアリングは、うわさ通り一気に大変更を受けていた。が、一方で搭載されるエンジンは望外にもスモールブロックの「LT2」と、V8 OHVの伝統は引き継がれている。
伝統といえば高い実用性やアフォーダブルであることもコルベットを形成する重要な要素だが、C8にはミドシップでありながら立派なリアトランクが設けられ、6万ドルからの価格も実現しているという。僕は出張先からストリーミングで発表の様子をみていたが、会場が何より盛り上がったのはこの価格発表の際だった。ルマンで勝とうというミドシップなら、現状の3倍くらいの値札が下がってもおかしくないという下馬評もあっただけに、うれしい誤算といったところだろう。日本の価格はパフォーマンスの仕様や盛り盛りの装備等で変化するが、そのパフォーマンスを思えば破格になることは間違いない。
これはさしずめGMのつくった「フォードGT40」ではないか……。
V8 OHVを搭載したミドシップカーとしていの一番に挙がる名前は、僕自身も最も憧れる一台だ。その栄光を公道で……と企画されたモデルがなぜか「デ・トマソ・パンテーラ」だったりするわけだが、技術的要素から言えば、C8コルベットはこれらのクルマとほど近い位置にいる。さらにレースフィールドに話を移せば、そんなコルベットが同じミドシップとして最先鋭のV6エコブーストを搭載した現在の「フォードGT」と戦うことになろうとしているのだから、運命とはかくも数奇なものなのかと思う。