牧場に住み着いたヒッピー集団
現実のシャロン・テートは、ブルース・リーから武術指導を受けていたという。この映画にも、彼が登場するシーンがある。テレビの『グリーン・ホーネット』で助手のカトーを演じ、注目を集めていた頃だった。仕事にありついたクリフは、撮影所で彼に出会う。ちょっとした絡みがあるのだが、ブルース・リーのファンは納得いかないのではないか。ブラピはチャック・ノリスやスティーブン・セガールをしのぐハリウッド最強の男なのだと考えるしかない。
撮影所のエピソードと並行して描かれるのが、ヒッピー集団である。いわゆるフラワーチルドレンだ。クリフがキャデラックで街を流していると、ヒッチハイクの少女に声をかけられる。彼女を乗せて向かったのは、スパーン映画牧場。実在した施設で、西部劇の撮影で使われていた場所だ。西部劇が下火になって寂れてしまい、ヒッピーが住みつくようになっていたらしい。
彼らは自然を愛し自由と平和をモットーとするハッピーなコミュニティーを築いていたはずだが、中にはカルト化して危険な思想を抱くようになった集団もあった。代表格が、チャールズ・マンソンが率いるファミリーである。スパーン映画牧場を根城にしていたのが彼らだった。
ここで、2つのパートが結びつく。彼らは1969年に世界中を震撼(しんかん)させる大事件を起こしているからだ。シャロン・テートの名が刻まれた惨劇は、歴史的事実として誰もが知っている。ハリウッドもヒッピームーブメントも、取り返しのつかないダメージを受けることになった。世界は、その日から決定的に変わってしまったのである。

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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