K青年の浮世離れした生活

これまで乗っていたのは「フォルクスワーゲンup! GTI」。ノーマルの「up!」のトランスミッションが5段AGSのみなのに対し6段MTを備えるハイパワーバージョンで、2018年に限定販売された人気モデルである。突然手放したのは、再発売が決まってしかもカタログモデルになるという情報を聞きつけたからだ。発表されてしまえば中古車価格が下落するのは間違いない。機敏な行動で、首尾よく高値で売り抜けるのに成功した。

自動車は趣味の対象であるとともに実用的な乗り物なのだから、いくつかのモデルを比較対照して選ぶのがまっとうな社会人というものである。徳大寺氏の言葉が響くのは一部の偏ったマニアの間の話で、多くの自動車ユーザーは性能と価格を吟味した上で理性的な判断を下す。当たり前の話だ。

up!の話でわかるように、K青年は極めて怜悧(れいり)な頭脳を有し、合理的な思考を旨としている。クルマ好きではあるが、欲しいクルマであっても高ければ買わない。リセールバリューまで考えて購入するモデルを決める。中古車サイトをチェックし、市場動向を探るのが日課だ。彼のクルマ選びを振り返れば、きっと有用な情報が得られるのではないか。

ただし、K青年のカーライフが尋常ではないことを断っておこう。大学の入学祝いに初代「ニューMINI」を買ってもらって以来、17年の間に購入したクルマは優に50台を超える。当然所有している期間は短い。MINIも1年で手放しており、3カ月程度で買い替えたクルマも珍しくないという。これまでの最長は「BMW 525iツーリング」の約2年。車検を取ったことが一度もないというから驚く。

現在は横浜と山梨県のリゾート地に家を持っており、2つの場所をクルマで移動する。走行距離が伸びるのは自然で、3カ月で手放したクルマでも1万kmは乗っているそうだ。浮世離れした生活とも言えるが、本人は人当たりのいい好青年である。イ・チャンドン監督の傑作映画『バーニング』に登場するベンというセレブ実業家にどことなく似た雰囲気を持つナイスガイだ。

K青年が先日まで所有していた「フォルクスワーゲンup! GTI」は2018年に限定販売されたもの。2019年2月にカタログモデルとして再導入されるとの報をさるディーラー筋から入手し、値下がり前にうまく売り抜けたそうだ。
K青年が先日まで所有していた「フォルクスワーゲンup! GTI」は2018年に限定販売されたもの。2019年2月にカタログモデルとして再導入されるとの報をさるディーラー筋から入手し、値下がり前にうまく売り抜けたそうだ。拡大
K青年がこれまでで最も長く所有したという「BMW 5シリーズ ツーリング」(E61型)。これも含めてただの一度も車検を通したことがないというのだから驚く。
K青年がこれまでで最も長く所有したという「BMW 5シリーズ ツーリング」(E61型)。これも含めてただの一度も車検を通したことがないというのだから驚く。拡大
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