速けりゃいいってもんじゃないでしょ

かように、いっこのアメ車好き&ウンチク好きとして、C8を無責任に信頼している記者ではあるが、じゃあ不安に思っている点がまったくないのかというと、さすがにそんなことはない。なにせ、現存するスポーツカーとしては世界最古の銘柄にして、自動車大国アメリカの誇りなわけである。勝ちゃあいいわけではない。美学ってもんが求められるのだ。

実際、コルベットは今までずっと、そういうクルマであり続けてきた。先述したパフォーマンスへの執念や、“国で唯一のスポーツカー”という希少な立ち位置に加え、旅グルマに必須のうすらデカいトランク(本当にデカかった……)、ロングノーズ・ショートデッキのスタイリング、またしても渡辺敏史氏の言葉を借りるところのアメ車的旅情感、そしてフツーのクルマ好きでも頑張れば手に届く価格設定などなど。こうしたもろもろの要件が、ある種の抽象的な不文律を形づくり、コルベットに特別な記号性というか情緒を与えてきたのだと思う。

それがどういうものかを言葉で説明するのはムズカシイし、そもそも日本人のワタクシが「アメリカ人にとってコルベットとは~」なんて語ったところで説得力がない。ないのだけれど、例えば小説『失踪』(ドン・ウィンズロウ著)の主人公の愛車が、父の残した1974年式コルベット スティングレイじゃなくて「ポルシェ911」あたりだったらどうだろう? 雰囲気ぶち壊しじゃあるまいか。百歩譲って「デ・トマソ・パンテーラ」あたりだったとしても……いや、なおのことぶち壊しだな。

1963年に登場したC2こと2代目「コルベット」。先述のゾーラ・ダントフがシャシー開発を主導したこともあり、C1から飛躍的に運動性能が向上していた。
1963年に登場したC2こと2代目「コルベット」。先述のゾーラ・ダントフがシャシー開発を主導したこともあり、C1から飛躍的に運動性能が向上していた。拡大
ウレタンバンパーが装備されたC3の中期モデル。『失踪』がどんな小説で、主人公がどんな人物かはAmazonなどで検索してください。アメリカの小説家は作中に登場させるクルマにこだわりを持つ場合が多いので、読んでいてい非常に面白いし、勉強になる。「白人はなんでマスタングが好きなんだ?」(ドン・ウィンズロウ著『ザ・ボーダー』より)
ウレタンバンパーが装備されたC3の中期モデル。『失踪』がどんな小説で、主人公がどんな人物かはAmazonなどで検索してください。アメリカの小説家は作中に登場させるクルマにこだわりを持つ場合が多いので、読んでいてい非常に面白いし、勉強になる。「白人はなんでマスタングが好きなんだ?」(ドン・ウィンズロウ著『ザ・ボーダー』より)拡大
1983年末に登場したC4。このころには排ガス規制によるパワーダウンは完全に克服しており、車体設計の刷新によるコーナリング性能の向上に加え、ハイパワー路線への回帰が図られた。
1983年末に登場したC4。このころには排ガス規制によるパワーダウンは完全に克服しており、車体設計の刷新によるコーナリング性能の向上に加え、ハイパワー路線への回帰が図られた。拡大
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