308、ゴルフ、インプレッサの共通点

なつめは、その場所にスケボーに乗った少年がいたことに気づいていた。調べていくと、国崎春馬(高杉真宙)という少年が事故を目撃していたことが判明する。しかし、彼はそのクルマに女性など乗っていなかったと話す。目が見える少年と視覚障害者のなつめのどちらを信用するのか。警察の捜査は難航する。

この展開は、韓国版・中国版とはかなり違っている。韓国版・中国版はほとんど同じなのだ。設定や物語の進め方だけでなく、カメラアングルまでそっくりである。それも当然で、どちらも同じ人物が監督を務めている。ただ、前に紹介した『ザ・バニシング -消失-』は、同じ監督がハリウッドで『疾走』としてリメイクするとまったく異なるテイストに仕上がっていた。オランダとアメリカより、韓国と中国は文化が近いということなのだろうか。

日本版がストーリーを変更したのは、はっきりとした理由がある。韓国版・中国版では事故に遭遇したのはタクシーに乗っていた時だとヒロインが証言したが、それはカン違いだった。実際には普通の乗用車だったのである。日本では、この設定は成立しない。タクシーの後席のドアは運転手が操作するからだ。自らドアを開けなければならないなら、それはタクシーではあり得ない。日本でリメイクするには、この点をクリアしなければならなかった。

犯人が乗っていたクルマは、韓国版では「プジョー308」、中国版では「フォルクスワーゲン・ゴルフ」だった。日本版では「スバル・インプレッサ」である。つくられている国は違うが、この3台にはわかりやすい共通点がある。すべてハッチバックなのだ。これは偶然ではない。

(C)2019「見えない目撃者」フィルムパートナーズ (C)MoonWatcher and N.E.W.
(C)2019「見えない目撃者」フィルムパートナーズ (C)MoonWatcher and N.E.W.拡大
「スバル・インプレッサ」
1992年に登場したスバルの小型乗用車。映画に登場するのは3代目モデルの5ドアハッチバック。
「スバル・インプレッサ」
	1992年に登場したスバルの小型乗用車。映画に登場するのは3代目モデルの5ドアハッチバック。拡大
 
第203回:女性を襲う異常者たちはハッチバックに乗る『見えない目撃者』の画像拡大
鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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