スマホを使ったアクションシーン

犯人がハッチバックに乗っていたことが、謎の究明に重大な意味を持つ。ヒロインは、鋭敏な聴覚でハッチバック特有の現象を感知する。韓国版・中国版はもちろん同じ筋立てだが、日本版は別な特徴から推理を構築していた。多少ムリ気味ではあるものの、車型の違いを聴覚だけで判断するというトリックは面白い。

3作品で共通するのは、スマホを使った逃走劇である。視覚障害者の女性と屈強な犯人では勝負にならないはずだが、スマホが備えている機能を利用してヒロインともうひとりの証言者が協力する。問題点も共通だった。韓国版と日本版は地下鉄の駅、中国版はショッピングモールが舞台となるのだが、いくら走っても誰にも出会わないのだ。まあ、スリリングな場面を演出するためなのだから、あまりやぼなことは言わないほうがいいだろう。

吉岡里帆が、体を張った熱演を見せていた。視覚障害者の役ということで、メイクができないからほぼスッピンである。かわいらしさとか華やかさとは無縁のヒロインなので、彼女としても殻を破るべく本気で立ち向かったのだろう。TBSドラマ『カルテット』の来杉有朱役があまりにもハマっていたせいで“信用できない女優”ナンバーワンの座を獲得していたが、これでかなり信頼を取り戻せたのではないか。

最後発なのだから、今回の『見えない目撃者』は前2作の弱みをカバーしていたのは当然である。クライマックスのアクションシーンは、かなり説得力を増していた。日中韓には、相手の国の作品をリメイクした作品がたくさんある。この3国の間にはいろいろと波風の立つことが多いが、対立をあおることで得をすることは何もない。映画人たちは、互いにリスペクトすることによってより良いものを生み出せることを知っているのだ。

(文=鈴木真人)

(C)2019「見えない目撃者」フィルムパートナーズ (C)MoonWatcher and N.E.W.
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『見えない目撃者』
2019年9月20日(金)全国公開。
『見えない目撃者』
	2019年9月20日(金)全国公開。拡大
鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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