多段化が進んだAT

自動車が誕生した当初から、変速機(トランスミッション)は重要な構成部品だった。ガソリンエンジンやディーゼルエンジンといった内燃機関でクルマを動かすには、トランスミッションが必ず必要になる。自動車はエンジンのトルクをタイヤに伝えて動くが、発進と高速走行では必要な駆動力が異なるからだ。

低速からの加速時には大トルクが必要となり、高速で定常走行する場合にはエンジン回転を抑えながらタイヤを高回転に保つことが求められる。速度に応じて適切な駆動力とエンジン回転のバランスを得るために、トランスミッションはなくてはならない機構なのだ。ほかにも、停止状態から発進するための機能、前進と後退を切り替える機能などがトランスミッションには備えられている。

MTはクラッチを切ることでエンジンとギアを切り離し、ギアを切り替えて変速した後にクラッチをつなぎなおす仕組みだ。一連の動作は手動で行われる。これに対し、一般的なATはクラッチの代わりに流体を介して力を伝えるトルクコンバーターを使い、ギアチェンジを自動化したシステムである。

ローとハイの2段から始まり、乗用車で4段、スポーティーなクルマで5段という時代が長く続いた。近年では多段化が進み、高級車では8段~10段のATが使われることが多くなっている。ギアの組み合わせによって変速比が固定されるため、多段化しても必ずシフトアップ時には一度エンジンの回転数が下がり、シフトダウン時には逆の現象が起こることは避けられない。

一方、CVTはギアを使わずに変速を行う。ギアがないので変速比は決まっておらず、連続的に変化させることができるのが特徴だ。無段変速の発想自体は古くからあり、1900年代初めにはアメリカのランバートが「フリクションドライブカー」を販売している。アルミニウムに繊維を貼り付けた円盤を回転させ、そのディスク面にもう一枚の円盤の縁を当てることで動力の伝達と変速を行うものだ。ただ、円盤の摩耗が激しくて頻繁に取り換えなければならず、少量が生産されたにとどまった。その後もさまざまな方法が試されたが、トルクコンバーター式のATに取って代わるほどの性能を持つ方式は現れなかった。

4代目「マツダ・ロードスター」に搭載されるマニュアルトランスミッション。クラッチによって駆動力の伝達・遮断を行い、ギアの組み合わせを変えることで変速する。これらの作業は、すべてドライバーがクラッチペダルとシフトレバーで行う。
4代目「マツダ・ロードスター」に搭載されるマニュアルトランスミッション。クラッチによって駆動力の伝達・遮断を行い、ギアの組み合わせを変えることで変速する。これらの作業は、すべてドライバーがクラッチペダルとシフトレバーで行う。拡大
一般的なATでは、エンジンから伝わる駆動力の伝達と受け流しを、流体を用いたトルクコンバーターで行い、変速を遊星ギアの組み合わせによって行う。写真は2014年にGMが実用化した8段AT。
一般的なATでは、エンジンから伝わる駆動力の伝達と受け流しを、流体を用いたトルクコンバーターで行い、変速を遊星ギアの組み合わせによって行う。写真は2014年にGMが実用化した8段AT。拡大
2017年に登場した「レクサスLC500」の10段AT。ギアの組み合わせで変速比を選択する有段変速機を高効率化するためには、多段化が必須となる。
2017年に登場した「レクサスLC500」の10段AT。ギアの組み合わせで変速比を選択する有段変速機を高効率化するためには、多段化が必須となる。拡大
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