急ピッチで進むBEV量産の準備

フォルクスワーゲンが“ディーゼルゲート”以降、電動化へと舵を切ったことは周知のとおりだが、MEBの計画の中身、CO2ニュートラルへの取り組みを見れば、その本気度の高さが想像以上なのだと思い知る。

フランクフルトショー取材の翌日にはツヴィッカウ工場を見学したのだが、そこでもフォルクスワーゲンの本気がうかがえた。これまでゴルフや「ゴルフヴァリアント」などのMQB車両が生産されていた同工場は、今まさにMEBの主力工場へと転換を図っている。現在はMQBの車両を生産する傍らで、ピカピカの工作ロボットが並ぶ新設のMEBラインに、ID.3やID.CROSSを日に数台、試験的に流しているそうだ。

ツヴィッカウ工場は、2020年には生産車両の半数以上がMEBとなり、2021年にはすべてがMEBに。これまでの生産能力は年産30万台だったので、2021年にはそのすべてがMEBとなる計算だ。そして2022年には生産体制が増強され、33万台のMEBモデルが送り出される計画となっている。なお、同工場は「ランボルギーニ・ウルス」や「ベントレー・ベンテイガ」などのシャシーの生産も担っているが、それは当面残されるようだ。

本格稼働を間近に控えた工場ではトレーニングも行われていて、従業員は電気関連の仕組みや取り扱いの仕方を学んだり、VR技術を使ってID.3の組み立てを体験したりしている。それだけではなく、世の中は常に変化し、人々はそれに対応してきたということを再認識するために、ドイツの歴史を振り返るためのプログラムも実施されている。教材には歴代首相の写真が並び、ベルリンの壁崩壊など重大な出来事のことも書かれている。従業員の中にはエンジン車からBEVへ生産を移すことに懐疑的な者がいるのも事実で、そのためのケアでもあるのだ。

また、BEVはエンジン車に比べて30%ほど短い労働時間で製造できることから、雇用を減らす必要もある。VWは配置転換や定年退職前時短勤務モデルなどだけですべてに対応することは困難だとも表明していて、だからこそケアも必要なのだろう。

「MEB」を用いたBEVが生産されるツヴィッカウ工場。
「MEB」を用いたBEVが生産されるツヴィッカウ工場。拡大
ツヴィッカウ工場は2013年12月にコジェネレーションプラントが稼働。2014年には約900平方メートルの太陽光発電装置も設置され、今日では約9万kWの電力が組み立てラインに供給されている。
ツヴィッカウ工場は2013年12月にコジェネレーションプラントが稼働。2014年には約900平方メートルの太陽光発電装置も設置され、今日では約9万kWの電力が組み立てラインに供給されている。拡大
新設された「MEB」専用ラインを流れる「ID.3」。現在は日に数台の車両を試験的に製造し、本格稼働へ向けた準備を進めている。
新設された「MEB」専用ラインを流れる「ID.3」。現在は日に数台の車両を試験的に製造し、本格稼働へ向けた準備を進めている。拡大
工場では従業員の研修も行われていた。写真はVR機器を用いて、「ID.3」の組み立てを疑似体験している様子。
工場では従業員の研修も行われていた。写真はVR機器を用いて、「ID.3」の組み立てを疑似体験している様子。拡大
エンジン車より部品点数が少なく、製造工程も少ない電気自動車。生産や開発の現場も、変革に迫られている。
エンジン車より部品点数が少なく、製造工程も少ない電気自動車。生産や開発の現場も、変革に迫られている。拡大
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