クルマよりも感じるナショナリティー

かつて自動車の内装には、外装以上に、設計した国の思想がふんだんに反映されていたものだった。

しかし近年では、衝突安全性やグローバル市場への対応といったさまざまな制約のもと、なかなかオリジナリティーを演出することができない。電動化と自動運転化が進行すれば、かけられる開発・製造コストはより偏ることになり、内装デザインはさらにおろそかになってゆくように思う。

電車にも、ハンディキャップのあるパッセンジャーへの考慮、不特定多数の人々が容赦なく使用することに対応するための耐久性といった真面目な課題はある。だが、自動車とは別次元の自由度があり、そこには今や自動車以上にナショナリティーが発見できるのだ。

そう鉄道の話をしたためている途中で、日本のニュースが入ってきた。

2019年10月12日から13日にかけて日本列島を襲った台風19号の影響で、JR東日本の長野新幹線車両センターが浸水、北陸新幹線120両が水につかったと報じられた。『NHKオンライン』が専門家の話として伝えるところによると、「最悪、廃車になるかもしれない」という。

新幹線は国際的に採用国が多い標準軌仕様である。専門外の立場にある筆者の提案をお許しいただければ、今回ダメージを受けたボディーの部分だけでも洗浄・再生し、車両が必要な国に輸出できればと考える。死にかけた北陸新幹線が、たとえ在来線になってもどこかの国で走り続けてくれれば、乗り物好きとしてはうれしい。旧型の営団地下鉄丸の内線の車両が、ブエノスアイレスで生き延びているように。

(文と写真と動画=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>/編集=藤沢 勝)

【深夜のシエナ駅で回送となる「ALn668」】

「ALn668」のシートは、ミヌエット風にリニューアルされていた。
「ALn668」のシートは、ミヌエット風にリニューアルされていた。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。21年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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