立ちはだかる、ヒトとカネの問題

そうしたリスクを、オーナーカーでの実証試験を進める過程で、自動車メーカー各社は再認識するようになったといえる。

これまで、自動車メーカーは、画像認識技術、人工知能(AI)、レーザーレーダー(通称:LiDAR)、衛星測位、そして自動運転に適した運転席のデザインなど、技術を優先した自動運転車開発を進めてきた。

そして今、自動車メーカーが直面している課題が、自動運転に対する社会の受容性とマネタイズ(事業化)の問題なのだ。

社会受容性とは、つまりは人々が自動運転を受け入れるかどうか、ということ。前述のように自動運転と非自動運転が混走すると、自動的に法定速度を順守する自動運転車に対して、非自動運転車、またはレベル1~2の自動運転車では、法定速度を守るための自制心・道徳観念が一段と問われることになる。そうした共生は、可能なのか。

またオーナーカーにしろサービスカーにしろ、車載の専用機器や路側の通信インフラの導入コストを誰が負担するのか、という経済的な問題について、さらに踏み込んだ議論が必要になってくる。

技術は進んでも、人と社会がそれに追いついていない。それが、自動運転の現状である。

自動運転は決して、今の交通事情を一気に解決してくれる「打ち出の小づち」ではない。交通は“ローカルベスト”であるべきなのだ。つまり、20○○年になったらすべてのクルマが完全自動運転になるという考え方は、通用しないのだと思う。自動運転が本当に世のため、人のためになるのかは、国や地域で大きな違いがあり、われわれは今後、それぞれの地域での最適解を考えなければならない。

(文=桃田健史/写真=トヨタ自動車、webCG/編集=関 顕也)

BMWのテスト風景。これはレベル4の自動運転シーンを記録したもので、運転席にドライバーがいない状態でクルマがパッセンジャーを乗せて走行している。
BMWのテスト風景。これはレベル4の自動運転シーンを記録したもので、運転席にドライバーがいない状態でクルマがパッセンジャーを乗せて走行している。拡大
BMWでは現在、レベル4の自動運転実現に向けて、ミュンヘン郊外で1800人の専門スタッフが鋭意開発を進めているという。
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