ショッキングな展示と教育的指導型

まずは筆者が住むイタリアの隣国のひとつ、スイスの例だ。毎年8月半ばになると、新学年を前に「学校が再開される」旨を示すポスターが、街頭ポールなどにくくりつけられる。学校が始まる、つまり子供たちが街を歩くことが増えるということをドライバーにアピールしているのだ。

4つの公用語があるため、同じデザインをベースに、地域ごとに文字を使い分けて印刷されている。

同じスイスでは、写真4も発見したことがある。スクラップ状態になった自動車の残骸の上には、「ふざけながら運転していた」と記されている。飲酒やながらスマートフォン、薬物などを伴った運転を戒めるものだ。その下にはこれと対峙(たいじ)するように、「生きているから今日を楽しめる」の文字が添えられている。スクラップが事故車のものかどうかは不明であり、期間限定のものと思われるが、アイキャッチ効果は交通安全プレートの数倍期待できる。

また欧州各国では、学校など公共施設のある市街地に差し掛かる前に、速度計測機とデジタル表示版が設置されていることがよくある。近づくと「あなたのスピードは〇〇km/hです」と自分のクルマの速度が表示される。

この装置、フランスでは「教育的指導型」と呼ばれている。イタリアでも見かけるが、かなりの確率で壊れているのはご愛嬌(あいきょう)だ。しかし、ただ「交通安全」と記されているより、説得力があることは確かだ。

こうした、学期はじめに毎年出現したり、期間限定で展開したり、デジタル表示版のようにライブで変化したりするものは、筆者が世田谷区で発見したような(おそらく)昭和時代からずっと貼られたままの交通安全プレートや交通安全宣言都市の塔より、格段に効果があろう。

ただし、筆者がヨーロッパをやみくもに礼賛するわけではない。それが次の例である。

写真4。スイスのルガーノ地方で。スクラップされた自動車を用いた安全啓発キャンペーン。保険会社やタイヤ販売会社なども協賛している。
写真4。スイスのルガーノ地方で。スクラップされた自動車を用いた安全啓発キャンペーン。保険会社やタイヤ販売会社なども協賛している。拡大
これはイタリアで。人気俳優を起用した、運輸省の期間限定広告。「運転するとき、俺はふざけない」のキャッチとともに。
これはイタリアで。人気俳優を起用した、運輸省の期間限定広告。「運転するとき、俺はふざけない」のキャッチとともに。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。20年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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