逆行するイタリア?

イタリアの高速道路会社アウトストラーデ・ペルリタリアの可変電光表示板には、現地版ETCである「テレパス」の広告として「テレパスで良い旅を」といった単なるメッセージが表示されることがある。苦情受付コールセンターの、記憶できないほど長いメールアドレスが表示されていることもある。いずれも交通安全と関係ないどころか、本来は緊急情報を伝えるべきスペースに表れるから気が散漫になる。

さらに近年は、第568回で記したように「Sei in un Paese meraviglioso(君は美しい国にいる)」と題したスローガンが展開されている。年を追ってサービスエリアのみならず、道路脇にまで掲示されるようになった。期間限定のキャンペーンではない。また、そう簡単に掛けかえられない常設看板もある。

「美しい国」の客観的根拠が乏しいのはもちろん、安全運転といった恩恵もない。欧州ではこれまでにないファンタジー感あふれる掲示物といえる。

イタリアは、日本の交通安全宣言都市の塔的センスに向かっているのかもしれない。

同時に、この「美しい国」看板、世田谷で発見した交通安全プレートのように何十年も掲示され続けるのか、そのときイタリアは美しい国なのか。経過を観察するしかない。

……と書いたところで、2019年11月24日、イタリア北部のアウトストラーダ・トリノ‐サヴォナ線で橋が崩落した。今回は土石流による自然災害的性格が強いが、昨2018年8月のジェノヴァに続く橋崩壊ということで、イタリアのニュースでは大きく取り上げられている。道に限っていえば、イタリアの「美しい国」への道のりはまだまだ長い。

(文と写真=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>/編集=藤沢 勝)

近年イタリアの高速道路会社が展開している「君は美しい国にいる」の常設型看板。フィレンツェで。
近年イタリアの高速道路会社が展開している「君は美しい国にいる」の常設型看板。フィレンツェで。拡大
「美しい国」にいるイメージを体で表現する筆者。
「美しい国」にいるイメージを体で表現する筆者。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。20年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

あなたにおすすめの記事
新着記事