似ているからこそ大切な個性

1980年代まではブランドによる運転感覚の違いが明確で、BMWは峠道などを機敏に走ると楽しく、メルセデス・ベンツは高速道路を巡航するのが得意だった。それが近年は車両の技術が進化して、どちらのブランドでも峠道から高速道路まで、自然な感覚で楽しく安定して走れるクルマが多くなった。

この進化に伴い、走行性能や運転感覚、乗り心地は、ひとつの方向に統合されつつある。その上でブランド表現の個性が求められている。

例えば操舵感は、小さな舵角から緻密に反応するのがBMW 1シリーズで、Aクラスはメルセデス・ベンツらしく少し穏やかだ。安定性の良しあしではなく、感覚的な違いがある。

インパネなどの内装も異なる。1シリーズの運転席に座ると囲まれ感があり、車両との一体感が得やすい形状だ。Aクラスでは、横長の液晶メーターパネルが2枚、メーターパネルの位置からインパネの中央部にかけて装着される。より未来的な仕上がりだ。

1シリーズの後席の足元空間は、FFになったことで余裕が生じた。以前はAクラスに比べて窮屈に感じたが、新型なら多くの人にとって不満はないだろう。

このように細かな違いはあるものの、FF化されたことで1シリーズは荷室や後席のスペースが広くなり、Aクラスだけでなく、他のCセグメントのハッチバック車との類似性が強まったといえる。その一方で、味付けの違いは今も明確に残している。ブランドの個性をいかに表現するかが、従来以上に大切になった。

またBMW、メルセデス・ベンツとも、今は拡大路線で車種ラインナップを増やしている。1980年代までのボディータイプはセダンとクーペ、一部のワゴンをラインナップする程度だったが、2000年頃からSUVが急増した。コンパクトモデルも増えて、BMWは前述の2シリーズ アクティブツアラーとグランツアラー、メルセデス・ベンツは「Aクラス セダン」に「CLA/CLAシューティングブレーク」をそろえ、さらにSUVの「GLA」という具合に細分化している。BMWにはMINIもある。

BMWやメルセデス・ベンツがコンパクトな車種を充実させると、当初は「400万円以下でベンツ(やBMW)が買える!」というような割安感が生じるが、次第にブランドの性格が一般化していく懸念がある。SUVも充実させながら、高級セダン時代に築いたブランド力の高さと求めやすさをいかに両立させるのか。今後は電気自動車の普及も絡み、プレミアムブランドは新しい時代に突入していく。

(文=渡辺陽一郎/写真=BMW、メルセデス・ベンツ、webCG/編集=藤沢 勝)

新型「1シリーズ」のダッシュボードは、BMWの伝統にのっとり、センターディスプレイなどが運転席側に向けてレイアウトされる。
新型「1シリーズ」のダッシュボードは、BMWの伝統にのっとり、センターディスプレイなどが運転席側に向けてレイアウトされる。拡大
「メルセデス・ベンツAクラス」のダッシュボードには、メーターパネル用とインフォテインメントシステム用の、2枚の液晶スクリーンがレイアウトされる。
「メルセデス・ベンツAクラス」のダッシュボードには、メーターパネル用とインフォテインメントシステム用の、2枚の液晶スクリーンがレイアウトされる。拡大
新型「1シリーズ」の荷室容量は、先代モデル比で+20リッターの380リッター。
新型「1シリーズ」の荷室容量は、先代モデル比で+20リッターの380リッター。拡大
「メルセデス・ベンツAクラス」の荷室容量は370リッター。わずかとはいえ、新型「1シリーズ」のほうが容量が大きくなっているのは興味深いところだ。
「メルセデス・ベンツAクラス」の荷室容量は370リッター。わずかとはいえ、新型「1シリーズ」のほうが容量が大きくなっているのは興味深いところだ。拡大
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