マスコミを利用して無実を主張

いかにも怪しいが犯人と断定することはできず、テッドは釈放されてしまう。レイプ犯でありネクロフィリアでもある彼は決定的な証拠を残しているのだが、当時は科学的捜査手法が確立していなかった。DNA鑑定が行われるようになるのはずっと先のことである。

事件の解明が進まなかった理由の一つに、アメリカの警察システムの不備もあった。テッドの犯行は5つの州にわたっていて、それぞれの地域の警察が別々に捜査を行っていたのである。お互いに連絡を取り合っていないから、情報が共有されていない。データベースどころか、FAXすらなかった時代なのだ。

それでもテッドは誘拐未遂事件で起訴され、1年以上15年以下の懲役という判決が下される。収監されてからも彼は無実を訴えて法廷闘争を続けた。法学生でもある彼は、自ら弁護を行ったのだ。マスコミがセンセーショナルに事件を取り上げるのを利用し、詭弁(きべん)と強弁を駆使して無実を主張する。こじつけの奇怪な論理でも、信じてしまう人はいるのだ。

映画には犯行シーンが描かれていないから、彼は無実なのかもしれないと観客が感じるのは仕方がない。当時もテッドの味方は多く、裁判には若い女性が詰めかけて彼を応援した。熱狂的なテッド信者である。日本でもオウム事件の時に似たような狂騒があったことを思い出す。

©2018 Wicked Nevada,LLC
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第209回:ビートルに乗ったさわやかなイケメン殺人鬼『テッド・バンディ』の画像拡大
 
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鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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