テレビ中継された裁判

裁判はテレビ中継されることになり、全米50州と海外の9メディアが取材に押しかけた。テッドは得意満面で長広舌を繰り広げる。注目を集めることが、彼にとっては快楽なのだ。ジョン・マルコヴィッチが演じる裁判官とのやり取りは、かなり忠実に実際の会話が再現されている。

熱は冷めるもので、1989年に死刑が執行された時は状況が逆転していた。処刑場所にはテレビクルーとやじ馬が集まり、花火を打ち上げて死刑執行を祝った。『殺人鬼との対談:テッド・バンディの場合』には、人々が歌って踊りながら喜ぶシーンが映し出されている。「Tuesday is Fry Day」「Burn Bundy Burn」などと悪趣味なフレーズを印刷したTシャツが販売される始末だった。

バリンジャー監督はインタビューの中でアメリカの特殊性について語っている。「世界で確認されている連続殺人犯の67%がアメリカに住んでいて、その数は過去1世紀半で2743人」で「FBIは常に25人から50人の連続殺人犯がアメリカ合衆国で犯行を行っていると推定」しているのだそうだ。だからといって、テッドの抱えていた闇がアメリカ特有のものだと考えることはできない。日本でも別の形をとった悲惨な犯罪が発生しているからだ。

テッドは2度の脱獄に成功している。2度目は46日間にわたって逃走生活を送っていたが、クルマに乗っていた時に超低速走行を怪しまれて職務質問を受け、逮捕された。盗難車で、またもビートルだった。クルマの好みと人格は、必ずしも一致するとはいえないらしい。

(文=鈴木真人)
 

©2018 Wicked Nevada,LLC
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『テッド・バンディ』
2019年12月20日(金)より、TOHOシネマズ シャンテ他 全国ロードショー。
配給:ファントム・フィルム
『テッド・バンディ』
	2019年12月20日(金)より、TOHOシネマズ シャンテ他 全国ロードショー。
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鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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