試してみよう!

クプラにとっては前述した2018年のジュネーブショーが、事実上のクルマの初披露の場となった。筆者は2015年からセアトでCEOを務めるルカ・デメオ氏に、クプラブランドの勝算を聞いた。ちなみにデメオ氏には、彼がフィアットに在職していた約20年前からたびたびコメントをもらっている。クプラについて彼は、フィアット時代に再ローンチを手がけたアバルトブランドを例に挙げながら、イタリア語で「vediamo!(試してみよう!)」と答えたものだ。

以後クプラはどのような推移をたどったのか。『オートモーティブニュース』発行の『トーク・フロム・ザ・トップ2019電子版』に掲載されたデメオ氏自身の解説によると、クプラは2018年に1万4300台を販売。2019年の販売台数は1~10月で2万0600台に達しているという。

すでに、ブランドをコントロールするクプラS.A.E(クプラ単独株式会社)という法人が設立されている。公式ウェブサイトでは2019年12月現在、29の国と地域を選択できるようになっている。一部はディーラーの連絡先のみの掲載だが、西欧と東欧、北欧諸国のほか、地中海のキプロス、カリブ海の仏領マルティニークとドミニカ共和国、メキシコ、オセアニアでは、ニュージーランドやシンガポール、そしてインド洋のモーリシャスといった国の販売店名が掲載されている。

欧州各国では目下、原則として既存のセアト販売店で扱う形が中心だが、メキシコでは2019年11月、世界初のフラッグシップストアであるクプラガレージがオープンした。

プロモーションにあたっては、セアトの名称が露出することを極力控えているのがわかる。例えば公式ウェブサイトでも、主要なページには「SEAT」の文字が見当たらない。ようやく発見できたのは「個人情報保護」に関する定式のページであった。

同時に、さまざまな形でブランド認知度を高める活動も行われている。ひとつはFCバルセロナだ。日本の楽天がメインパートナーを務めていることでも知られるこのサッカーチームのオフィシャル自動車パートナーを、クプラが務めている。

また、従来セアトブランドで戦っていたワールドツーリングカーカップ(TCR)には、2018年からクプラに名前を変えて参戦を続けている。

「クプラ・アテカ」の脇にはブランドロゴが。なお、「Cupra」とは、古代ローマ以前にまでさかのぼる、豊潤の女神に由来する名前だ。
「クプラ・アテカ」の脇にはブランドロゴが。なお、「Cupra」とは、古代ローマ以前にまでさかのぼる、豊潤の女神に由来する名前だ。拡大
「クプラ・アテカ」のベースである「セアト・アテカ」は、2016年に欧州を中心とした64の市場に投入された。
「クプラ・アテカ」のベースである「セアト・アテカ」は、2016年に欧州を中心とした64の市場に投入された。拡大
2018年のジュネーブショーに出品された電動コンペティションカーコンセプト「eレーサー」。
2018年のジュネーブショーに出品された電動コンペティションカーコンセプト「eレーサー」。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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