人生の悲哀を味わうレース映画

『ワイルド・レース』はその名の通りレースを舞台にした映画。アメリカで人気のダートトラックレースである。伝説の名レーサーだったサムは引退し、裏方に回っている。息子のキャムがドライバーとして参戦しているものの、資金不足がたたってマシンの信頼性がない。トラブル続きに嫌気が差した彼は、ライバルのリンスキーの誘いに乗って移籍する。ここまで聞けば、ラストまでの展開が誰にでも予想できるだろう。

サムを演じるのはジョン・トラボルタ。『サタデー・ナイト・フィーバー』で一躍人気俳優となったのは1977年のこと。長い低迷期を経て『パルプ・フィクション』で再ブレイクしたのが1994年だ。最近は『ポイズンローズ』で探偵役を演じたりして一定の存在感は示しているものの、すっかりB級映画俳優に落ち着いてしまったようだ。

これまでの経緯を知る者にとっては、栄光と没落、奇跡的な復活を描く映画のストーリーが彼の人生とオーバーラップして見え、切なくなってしまう。この作品も、まごうことなきB級である。壊れてばかりだったマシンが急に信頼性を回復するとか、都合よく進行するのはB級のお約束だ。リンスキーとの確執は明確に語られないし、妻とのエピソードもあまり感動的ではない。すべてを家族の絆で片付けてしまいがちなアメリカ映画の弱点が詰まっている。

小さなオーバルサーキットで行われるレースなので、撮影の規模も限定的。金はかかっていないが、迫力はある。そもそも、派手なアクションシーンを楽しむより、人生の悲哀をかみしめる映画なのだ。

鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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