中国マネーを注ぎ込んだラリーコメディー

次もモータースポーツが舞台の映画。『ペガサス/飛馳人生』は、ラリーを描く中国映画である。こちらもかつて花形ドライバーだった男が主人公。チャン・チー(シェン・トン)はラリー界を席巻したスターだったが、賭博行為が発覚して5年間の出場停止に。屋台で餃子を売って食いつないでいる間に、若き天才ドライバーのリン・ジェントン(ホアン・ジンユー)が頭角を現していた。

もちろん復活の物語なのだが、『ワイルド・レース』とはまったく様相が違う。『ペガサス/飛馳人生』は、基本的にコメディーなのである。チャン・チーは復活を目指すが、運転免許すら失っているので教習所通いから始めなければならない。ラリーテクニックを見せつけようとして教官のクルマを壊してしまったりするドタバタ劇が繰り広げられる。正直言って、ショボくてサムいシーンが連続する。

ドラマパートとは対照的に、ラリーシーンは本格的だ。天山山脈のバインブルク草原を舞台に、本物のラリーマシンを走らせる。シトロエンやらシュコダやらのマシンが危険なコースを爆走するのだ。転がしたり燃やしたり、壊したクルマだけでいくらかかっているのか。

ハン・ハン監督は元レーシングドライバーで、日本のフォーミュラBMWに参戦していたという。『頭文字D』が好きなのだそうで、無意味に新旧「86」が映っていた。ラリーはフォルクスワーゲンとトヨタの対決となる。正確には「上海大衆ポロ」と「広汽豊田カローラレビン」ということになろうか。

最後には戦闘機まで登場する。製作費は80億円というからやりたい放題である。これが今の中国映画が持つ勢いなのだ。つくりは雑だが、金の力でスケールだけはデカい。日本映画ははるかに低予算で立ち向かわなければならないのだから大変だ。それを考えれば東出昌大と新田真剣佑がW主演した2018年の『OVER DRIVE』は結構ガンバっていたんだなと感じる。

(文=鈴木真人)

鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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