白熱電球からハロゲン、HIDへ

1919年には、フランスで自動車用ヘッドライト専用工場のプロジェクチュル・シビエが設立される。一日に100個という量産体制を整え、プジョーやシトロエンに製品を供給した。

白熱電球を使ったヘッドライトは燃焼式に比べて飛躍的に利便性が高まったが、弱点もあった。発光体のタングステンが高熱で昇華し、ガラスの内側に付着して黒ずんでくるのだ。使用しているうちに次第に暗くなり、十分な照度を得られなくなってしまう。

この問題を解決したのが、ハロゲンランプである。フィラメントにタングステンを使うのは同じだが、電球内に不活性ガスの窒素やアルゴンのほかにハロゲンガスを封入している。ガラスに付着したタングステンはハロゲンと化合し、再びフィラメントに戻る。自己再生能力を持つことで長寿命を実現したのだ。フィラメントの温度を高く設定できるので、白熱電球より明るくて白い光を発するのも特長だった。

白熱電球やハロゲンランプとはまったく異なる発光方式を持つのが、ディスチャージヘッドライトである。HID、キセノンランプなどと呼ばれることもある。フィラメントを使わず、電極間の放電を利用して発光する。ネオンや蛍光灯と似た仕組みで、バルブ内にはキセノンガス、水銀、ハロゲン化金属などが封入されている。ハロゲンランプより消費電力が少なく、コンパクトな設計ができるメリットがある。消耗品のフィラメントを使わないので、耐久性も高い。

ただし、点灯時には瞬間的に高電圧が必要で、昇圧のためのユニットを用意しなければならない。ライト本体がコンパクトでも、システム全体としては場所をとってしまうこともある。スイッチを入れてから本来の明るさになるまでに時間がかかり、色温度を安定させるのにも工夫が必要だった。コストも高くなりがちだったが、1991年にBMWが「7シリーズ」に採用したのを皮切りに、高級車を中心に普及が進んでいった。

1944年製「ルノー4CV」に装着された、シビエのヘッドライト。いち早くヘッドライトの量産体制を確立したシビエだが、1978年に同じフランスの部品メーカー、ヴァレオに吸収された。
1944年製「ルノー4CV」に装着された、シビエのヘッドライト。いち早くヘッドライトの量産体制を確立したシビエだが、1978年に同じフランスの部品メーカー、ヴァレオに吸収された。拡大
長らく自動車用ヘッドライトの主軸を担ってきたハロゲンランプ。HID、そしてLEDが登場した今日でも、コストの低さから広く用いられている。写真は2017年型「トヨタ・ハイラックス」のもの。
長らく自動車用ヘッドライトの主軸を担ってきたハロゲンランプ。HID、そしてLEDが登場した今日でも、コストの低さから広く用いられている。写真は2017年型「トヨタ・ハイラックス」のもの。拡大
1986年から1994年にかけて生産されたE32型「BMW 7シリーズ」。1991年に、乗用車として初めてディスチャージヘッドライトが採用された。
1986年から1994年にかけて生産されたE32型「BMW 7シリーズ」。1991年に、乗用車として初めてディスチャージヘッドライトが採用された。拡大
一時は高級車用のヘッドライトとして持てはやされたディスチャージヘッドライトだが、現在はより耐久性や省電力性に優れ、デザインや照射範囲の自由度が高いLEDに取って代わられている。
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