宣伝効果は抜群

教習所の前で見上げると、以前はロゴ+校名だけだった看板には、例の124スパイダーの写真が誇らしげに挿入されていた。後日判明したが、今や彼らは「124スパイダー試乗体験」なるパッケージも、地元サーキットで提供しているらしい。

受付ブースには、例のテスラの教習車をプリントしたのぼりが早速立てられている。スタッフのサーラさんによると、モデル3は2019年秋に導入したという。

わが街にテスラの販売拠点は、いまだ存在しない。聞けば「引き取りはミラノだった」と教えてくれた。シエナ-ミラノ間は約380km。距離的にもやや大変な買い物である。

テスラ専用の急速充電器「スーパーチャージャー」はおろか、通常の充電ポールも教習所の近くには見当たらない。

どうしているのかというと、電力会社が設置した、1kmほど離れたスーパーマーケットにある充電ポールや、指導員の自宅で毎日チャージしているのだという。ちなみに、イタリアでは指導員が毎日昼休みに家へ帰る。したがって、その間も充電しているのだろう。

教習所における具体的な使途は「AT教習用」だ。イタリアにはAT限定免許が存在しないので、任意の選択科目である。

しかしながら、イタリアでテスラ・モデル3のベース価格は4万9500ユーロ(約604万円)だ。「メルセデス・ベンツGLC」(4万8603ユーロ。約593万円)よりも高額なのである。

EV+レベル2相当の自動運転車なら、「日産リーフ」という選択肢もあろう。性能を異にするので一概に比較するのはあまり意味がないが、テスラ・モデル3よりも2万ユーロ近く安い3万0700ユーロ(約374万円)から買えることからすると、この教習所はかなり高い買い物をしたものだ。

しかしながらこのバルツァナ教習所、前述したように長年にわたってキャッチーなクルマを導入してきたという経緯がある。

実際、後日インターネットでチェックしてみると、バルツァナ教習所のモデル3は、全国紙でも「イタリア初の自動運転教習車登場」といった見出しで報道されていた。

そう考えるとモデル3は、早くもそれなりの費用対効果を発揮しているといえよう。

「テスラ・モデル3」を導入したバルツァナ自動車教習所。看板には、例の「フィアット124スパイダー」教習車も。
「テスラ・モデル3」を導入したバルツァナ自動車教習所。看板には、例の「フィアット124スパイダー」教習車も。拡大
対応してくれたサーラさん。「自宅にはAT車もあるが、個人的には操縦感覚という点でマニュアル車一択」と熱く話してくれた。
対応してくれたサーラさん。「自宅にはAT車もあるが、個人的には操縦感覚という点でマニュアル車一択」と熱く話してくれた。拡大
バルツァナ自動車教習所のメイン教習車は「フィアット500」。同校は2007年のデビュー以来、すでに複数回にわたって購入し、教習車として使用してきた。
バルツァナ自動車教習所のメイン教習車は「フィアット500」。同校は2007年のデビュー以来、すでに複数回にわたって購入し、教習車として使用してきた。拡大
日本の原付き免許にあたる「AM」という免許で操縦できる三輪トラック。
日本の原付き免許にあたる「AM」という免許で操縦できる三輪トラック。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。21年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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