ギアを使った精密なステアリング機構が普及
四輪車の操舵では、三輪車では生じなかった新たな問題を解決しなければならない。旋回時に通る軌跡は、内輪と外輪では異なるからだ。内輪のほうが旋回半径が小さいので、スムーズにコーナリングするには外輪よりも大きな舵角を与える必要がある。この問題はすでに19世紀初期には認識されていて、ルドルフ・アッカーマンによって理論化されていた。すべての車輪の軌跡が共通の中心点を持つようにする方法で、アッカーマン配置と呼ばれる。
想定される円の中心点は後輪の車軸の延長線上にあり、その点から伸ばした線が内側の前輪と外側の前輪の回転中心に直交する。切れ角の差は、ホイールベースとトレッドの数値から計算することができる。この原理をもとにした操舵機構が、アッカーマンステアリングである。1901年の「パナール・エ・ルヴァソールB2」は、すでにこの方式を採用していた。
当初はティラーやステアリングホイールから車軸をダイレクトに動かしていたが、エンジンが大型化し、車重が重くなると、負荷が大きくなってくる。操舵に大きな力が必要となるため、軽減するための機構が取り入れられた。「T型フォード」のステアリングホイール内部には、プラネタリーギアが備えられていた。減速機構によって操舵力を高めるわけだ。
自動車の高性能化が進展すると、ステアリング機構の精密性が重要になってくる。高速走行では、わずかな角度の差が大きな進路の違いになって表れるからだ。正確な操舵を実現するために、ウォームギア(ネジ型歯車)とセクターギア(扇型歯車)を組み合わせる方法が考案された。ステアリングシャフト先端のウォームギアが回転するとセクターギアを前後に動かし、リンクを介してアームに力が伝わる。
スムーズさを向上させるために改良されたのが、リサーキュレーティングボール式ステアリングだ。ウォームギアの代わりにボールねじを使うもので、バックラッシュを抑えて耐摩耗性も向上させることができる。この方式は、長い間自動車のステアリング機構の標準とされてきた。
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