スイッチ類の装備などで多機能化

ステアリングホイールは、円形のリムとスポークで構成されたシンプルな形状である。付属するのはホーンボタンぐらいというのが普通だったが、次第に取り付けられるスイッチ類が増えていった。ほとんどスイッチパネル化しているF1マシンほどではないが、乗用車でもメーター表示切り替えやオーディオ操作、ハンズフリー電話などのスイッチがステアリングホイールに付けられていることが多い。変速のためのパドルが装備されることも増えている。エアバッグも内蔵されており、ステアリングホイールは今や操舵を担うだけの装置ではなくなっている。

日産は2013年に、「インフィニティQ50」で世界初のステアバイワイヤを採用した。ステアリングホイールの動きを物理的に前輪に伝えるのではなく、センサーが入力量を読み取り、アクチュエーターでタイヤに切れ角を与える仕組みだ。ドライバーの操作を電気信号に置き換えることで制御の自由度は増す。スカイラインの機構では万が一の故障に備えてシャフトが残されているが、それすら不要になれば、エンジンルーム内のレイアウトもより無理なく行えるようになるはずだ。

入力装置という位置づけになれば、ホイール状である必然性は弱まる。実際、コンセプトカーではさまざまな代替装置が試されてきた。2009年の東京モーターショーでは、トヨタが2本のジョイスティックでステア・アクセル・ブレーキのすべてを制御する「FT-EV II」を披露。2011年には、ホンダがツインレバー・ステアリングを装備した3台のコンセプトカー「AC-X」「EV-STER」「マイクロ コミューター コンセプト」を出展していた。

しかし、今のところステアリングホイールに取って代わる操舵装置は現れていない。回転運動を用いるステアリングホイールは、ティラーやバーハンドルよりもはるかに自由な操舵感をもたらす装置なのだ。自動運転が実現すれば、ステアリングホイールの必要性が失われるといわれている。しかし、場合によっては人間の操作が求められる「レベル4」の自動運転システムまでは、いずれにしろ操舵装置をなくすことはできない。まだしばらくの間、丸いステアリングホイールとの付き合いが続きそうである。

(文=webCG/イラスト=日野浦剛)

2020年モデルの「メルセデス・ベンツEクラス」のステアリングホイール。昔ながらのホーンに加え、パドルシフト、ハンズフリー通話、インフォテインメントシステム、クルーズコントロールと、さまざまな機能がここで操作可能となっている。
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2013年のデトロイトモーターショーで発表された「インフィニティQ50」。後に日本市場へも13代目「スカイライン」として導入された。
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ステアリングバイワイヤとは、ドライバーのハンドル操作を電気信号化し、アクチュエーターによって車輪を転舵する仕組みである。「インフィニティQ50/日産スカイライン」の機構には、故障時にも操舵が可能なよう、ステアリングシャフトが残されている。
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2009年の東京モーターショーで発表されたトヨタのコンセプトカー「FT-EV II」。
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「FT-EV II」のインストゥルメントパネルまわり。ステアリングホイールはなく、2本のジョイスティックで加速・制動・操舵のすべてを操作する仕組みとなっていた。
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