男たちは旧態依然の凡庸な悪

マーゴット・ロビーの弾けっぷりが素晴らしい。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』で見せたキュートでかれんな役柄から大変身。ツヨカワでワルカワな最強女子へと変貌を遂げた。モラルがなく、自分の気持ちを優先して他人のことは知ったこっちゃない。バットを振り回して破壊活動に明け暮れる暴れん坊で、裏切りは日常茶飯事。無自覚な悪女なのだ。

今思えば、『スーサイド・スクワッド』は消化不良だった。ハーレイ・クインの魅力は出し惜しみされていた感がある。いろいろと理屈がつきまとっていて、突き抜けた明るさがなかった。悪事に励むのに、理由なんていらない。正直とか真面目とかの言葉と無縁な彼女だから、どんなにヒドいことをしても爽快感がある。

対照的なのが、敵のブラックマスクである。旧態依然とした悪役なのだ。支配欲と権力欲が強く、恐怖で組織を支配する。敵対する相手に屈辱を与えることが何よりの喜びだ。ナルシストで着飾っているが、センスがいいとは思えない。嫉妬心が強くて疑い深く、ネガティブな感情ばかりをまとっている。悪の造形として、誠に凡庸なのだ。

だからこそ、ハーレイ・クインが輝いて見える。彼女は組織や秩序に興味がなく、自分の瞬間的なハッピーだけが行動原理となっている。もしかすると、時間の観念もないのかもしれない。だから平気で人に暴力をふるうのだ。後で復讐される可能性があることには、考えが及ばない。

(C) 2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics
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鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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