ホンダ・フィット ホーム(FF/CVT)
フランスかぶれでいいじゃない 2020.05.04 試乗記 “心地よさ”をキーワードに開発されたという新型「ホンダ・フィット」。ホンダが満を持して投入したこのモデルは、意外にもフランス車のような趣を感じさせるクルマに仕上がっていた。4代目に進化したユーティリティー系コンパクトの出来栄えを報告する。原点回帰のほのぼのデザイン
新型にモデルチェンジした、ということ以外は特に予備知識もなく対面したホンダ・フィット。見た瞬間、目に飛び込んだのは紺のボディーにシルバーのルーフの、ツートンのボディーカラー。「日本車にしては珍しい色使いだな〜」と思いつつ、ん? 何かに似てるな……と思い出したのは「ルノー・アヴァンタイム」。2ドアクーペスタイルのミニバン(?)という変わったクルマだったけど、ブルー(やグレー)のボディーにシルバーのルーフのツートンが印象的だったのだ(どんなのだかわからない人は、ぜひググってみてください)。で、あたらしいフィットはそのアヴァンタイムの色使いに似てるなあ……というのが第一印象。
いっぽうカラー以外の、全体のデザインについては、あまり印象に残らなかった。まあ、フツーのコンパクトハッチバックという感じで、可もなく不可もなく。ツルンとしていて、ずんぐりむっくりなフォルム。パッと見で「カッケー!」と思わせる、エッジーなデザインの「トヨタ・ヤリス」などと比べると、かなりユルくて牧歌的だ。聞けば、新型フィットのデザインは「柴犬の愛らしさをモチーフにした」ということだから、狙いは達成されているのかもしれない。
印象の薄いデザイン、といえば初代フィットもそうだった。初代が登場したのは2001年。やはり印象の薄かった「ロゴ」の後継としてフィットが出たとき、僕は「なんともフツウなデザインのクルマだなぁ」と思ったけど、その初代フィットは空前の大ヒットモデルとなり、日本カー・オブ・ザ・イヤーも受賞。その主たる理由は燃料タンクを前席のシート下に押し込んだ「センタータンク・レイアウト」という画期的な構造による、コンパクトカーの常識を覆すほどの室内の広さにあった。
フィットは初代、2代目と続けて日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞する快挙を成し遂げたが、次の3代目、つまり今回の新型のイッコ前にあたるモデルはややコケた。走りも燃費も徹底的に追求して、ついでにデザインもバキバキにエッジを立ててがんばったけど、ライバルたる「トヨタ・アクア」の逆襲、そして身内である「N-BOX」シリーズの大ヒットの陰に隠れ、失速してしまった感がある。
“柴犬”こと4代目フィットに漂うほのぼの感は、つまり“原点回帰”ともいえるだろう。資料によれば、開発にあたって最も大切にしたのは「心地よさ」だという。個人的にもバキバキ系の3代目より、ぐっとユルくなったこの4代目のほうが好みだ。
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