ベントレー・フライングスパー(4WD/8AT)
アナログをデジタル的に 2020.05.25 試乗記 ベントレーの新たな旗艦モデルの座を担う、新型「フライングスパー」が日本上陸。最新のテクノロジーを惜しみなく投入して開発された、ラグジュアリースポーツサルーンの仕上がりをテストする。フラッグシップの資質を問う
2020年1月、10年余りにわたってベントレーのフラッグシップの座にあった「ミュルザンヌ」の生産終了が発表された。代わってサルーンのトップレンジを担うのが、2019年秋にフルモデルチェンジを果たした新しいフライングスパーということになる。
理由は各種規制の強化にあると理解はできても、僕も含めた守旧派の方々にとってはなかなか受け入れ難い話だろう。半世紀以上もベントレーの核心であり続けた6.75リッターのV8や人手でしか整えようのないボディーワーク、磨き込まれたエッジィなステンレスパーツなど、ミュルザンヌは効率とは真逆の工芸と呼ぶにふさわしいものだった。それゆえ生産能力は限られ、この10年の間につくられた数は約7300台と、同期間のベントレー全数の10分の1にも満たない。
対するフライングスパーは設計思想からして新しく、生産性も効率も高い。ミュルザンヌに等しい工芸的な存在感を望むのは酷な話で、もちろんそれはベントレーも理解しているはずだ。ゆえに間違いなく織り込まれているだろう、それを補う新たな提案や魅力がいかなるものか、それがフライングスパーのステータスに大きく関わってくる。