イタリアでも取説ビデオ導入

FCAの販売店ものぞいてみる。筆者が敷地内に入ると、こちらのコラムに登場したセールスパーソン、アレッシオ・カパンノーリさんが屋外で休憩していた。

彼らはこれまで6人体制で勤務してきたが、現状は毎日2人ずつ交代で出勤しているという。

アレッシオさんの担当であるアルファ・ロメオとジープのショールームに入れてもらう。

フィアットとランチアのコーナーに商談客が1人いるのが見える。

ルノー店とは違って既存のテーブルだったが、やはり消毒用ジェルとビニール手袋が置かれている。

マスクを忘れてきた顧客に渡せるよう、セールスパーソン1人あたり20枚が取りあえず支給されたという。

周囲には、握手禁止のイラストとともに「不作法ではありません。良識です」と記したボードが置かれている。

これまで意識したことがなかったが、イタリアで握手なしにセールスパーソンと会話を始めるのは、ぎこちないものだ。

FCAはイタリアで「コンチェッショナリア・シクーラ(安全な販売代理店)」と名付けたキャンペーンの展開を開始した。具体的にどんな内容なのか聞いてみた。

「床に敷いてあったカーペットは、すべて撤去しました」。そして清掃会社が毎朝やってくること、展示車両のドアは施錠しておいて、お客さんのリクエストがあったときのみ解錠することを教えてくれた。

商談は原則としてアポイントメント制となったが、もし接客能力に余力がある場合には、予約なしでも対応することにしているという。

ルノーのダヴィデさんと同様、アレッシオさんのデスクにも、プレキシグラス製のついたてが設けられていた。

彼のものは、隣町の工場による仕事だという。工作精度はルノーのものよりもかなり粗く、「早くも一部が割れちゃいました」と笑いながら破片を見せてくれた。

セールス1人に対して、対面する顧客も1人のみに限定している。

「一緒に来訪されたパートナーの方は、あちらでお待ちいただきます」とアレッシオさんが指す方向を見ると、遠くにソファが置かれていた。

「わが家のように、たった1ユーロの出費でも女房の決裁が必要な家庭は?」と筆者が訴えると、アレッシオさんはマスクをしながら笑った。

「安全な販売代理店」作戦でもうひとつ導入したのは、納車時における車両説明の簡略化だ。

セールス/顧客双方の安全を確保すべく、担当者自らによる納車時の各機能説明を必要最低限にした。代わりに、動画投稿サイトを活用したチュートリアルビデオを順次準備してゆくという。

日本では早くも1990年代初頭に、高級車を中心に取り扱い説明のビデオテープが導入された。今、それがウェブ版となって、イタリアでもスタートするというわけだ。

シエナのFCA販売店であるスコッティ・ウーゴで、アルファ・ロメオとジープを担当するアレッシオ・カパンノーリさん。以下2020年5月7日撮影。
シエナのFCA販売店であるスコッティ・ウーゴで、アルファ・ロメオとジープを担当するアレッシオ・カパンノーリさん。以下2020年5月7日撮影。拡大
参考までに、2018年6月にご登場願ったときのアレッシオさんの姿。
参考までに、2018年6月にご登場願ったときのアレッシオさんの姿。拡大
こちらにも消毒ジェルが。「社会的距離」の数字が貼り替えられているところに、次々と変更される条例に追従する難しさがうかがえる。
こちらにも消毒ジェルが。「社会的距離」の数字が貼り替えられているところに、次々と変更される条例に追従する難しさがうかがえる。拡大
マスクのほかにビニール手袋を着用する従業員も。従来はもっぱら整備ブースのものだった座席用ビニールシートカバーを、ショールームの車両にも活用している。
マスクのほかにビニール手袋を着用する従業員も。従来はもっぱら整備ブースのものだった座席用ビニールシートカバーを、ショールームの車両にも活用している。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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