「スラクストンRS」には、クラッチレバー操作の負担を軽減させる「トルクアシストクラッチ」が備わる。
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往年のキャブレターを思わせる、凝ったデザインのインジェクション。エアクリーナーカバーは金属製のメッシュで飾られる。
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クラシカルなデザインのメーターや、入念にバフ掛けされたアルミ製のトップブリッジもカフェレーサーのイメージを引き立てる。
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リアサスペンションは伝統的なツインショック。オーリンズのフルアジャスタブルタイプがおごられている。
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「トライアンフ・スラクストンRS」は、2019年11月にデビュー。国内では2020年2月に発売された。
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回して楽しいビッグツイン
このハンドリングには、エンジン特性も大きく影響している。エンジンはクランク角270度の「スラクストン1200」用水冷SOHC直列2気筒をベースに、8PSの出力アップを図り、その発生回転も750rpm高くなっている。つまり高回転化しているのだが、神経質さは皆無だ。街中での常用回転域である4000rpm以下では実に滑らかで、鼓動感がウリの270度クランクであることを忘れてしまいそうなほど。極低速でも実に扱いやすい。
しかし5000rpmに近くなると、エンジンは一気に2気筒エンジンらしいビート感を高め、気持ちよく伸びていく。等間隔爆発(360度クランク)だった旧トライアンフツインエンジンとは鼓動感は違うものの、その伸びやかさは同じ。ペースを上げ、高いエンジン回転を維持して走るのも楽しい。やはりトライアンフの2気筒エンジンは高回転が気持ちいい。
トライアンフは“ネオクラシックブーム”なんていわれる前から、2気筒エンジンモデルをラインナップし、大事に育て進化させてきた。したがって、この「ボンネビル」系の水冷2気筒エンジンファミリーは、ネオクラシックではなく、トライアンフのスタンダードだ。その中にあって、今回試乗したスラクストンRSは、そのスタンダードをベースにパワーアップと足まわりの強化を図った、まさにファクトリーカスタムといえる。トライアンフはいま、スペシャルなファクトリーカスタムモデル「TFC(TRIUMPH FACTORY CUSTOM)シリーズ」も売り出し中なのだが、筆者はこのスラクストンRSもTFCの末席を占めるモデルと考えている。
個人的なことだが、筆者はシリンダー内爆発の粒がそろった旧トライアンフの360度クランク2気筒エンジンが好きだ。しかし左右に並んだ2つのピストンが一緒に上下する360度ツインは、その上下動による大きな慣性力が振動を生み、リアタイヤが路面をつかむ感覚が希薄になる(それでもそのフィーリングは好き)。270度クランクエンジンはクランクピンの位置を少し変え、上下するピストン位置をずらすことでそうした問題を軽減しようとしている。煩雑な首都高速のような場所でも、リアタイヤが路面を捉える感覚を強く感じながら走りを楽しむことができたのは、そんなエンジン特性だからこそなのかもしれない。
(文=河野正士/写真=向後一宏/編集=関 顕也)
トライアンフ・スラクストンRS
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【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×745×1030mm
ホイールベース:1415mm
シート高:810mm
重量:197kg
エンジン:1200cc 水冷4ストローク直列2気筒SOHC 4バルブ
最高出力:105PS(77kW)/7500rpm
最大トルク:112N・m(11.4kgf・m)/4250rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:--km/リッター
価格:192万0500円