40年前のレオーネ

その作業とは、1980年型「スバルGLエステートバン4WD」のレストアだ。GLとは当時のイタリアにおける「レオーネ」の呼称である。

レオーネシリーズとしては2代目にあたるこのクルマ、お客さんから引き取ったものを長年そのまま保管していたのだという。

休業中にリッカルド氏が、レストアの最初の一歩として手がけたのはボディーだ。知人のカロッツェリィエレ(板金工)と二人三脚で作業を進めた。

走行距離は9万6000kmと、イタリアの中古車としては少ない部類である。しかし「最も苦労したのはボディーのサビでした」とリッカルド氏は語る。「特にフロントフェンダーとサイドシル部分です」と振り返る。

シエナ地方は今でも少し郊外に出れば、ストラーダ・ビアンカ(未舗装路)が広がる。新車当時のオーナーは、その性能を存分に楽しんでいたに違いない。

参考までに、後ほど紹介する車両も含め、すべてけん引用フックが追加されている。イタリアでは歴代オーナーたちが、スバル車のキャラクターを存分に引き出していたことを匂わせる。

これから、1.8リッターOHVボクサーエンジンを含む機構部分と内装も手がけなければならない。ただし「(最近の)スバル車は電子関連パーツが急速に増えています」と語るリッカルド氏にとって、限りなくメカニカルな80年代車両の修復は、自身にとっても日々の仕事のよきリフレッシュとなるに違いない。

しかし、それよりもリッカルド氏はレストアする理由について「2代目GLは、思い出のクルマですから」と語る。

クルマの年式である1980年は、それまでイノチェンティディーラーのメカニック長だった父親のニコロ氏が、44歳で一念発起してスバルの地区販売代理権を取得、つまり店を開いた年だ。

第442回で記したとおり、4WD方式への関心だけで店を開いたものの、いざ始めてみると、初年に売れたのはたった1台。銀行にも融資を渋られた。

「当時、私は10歳でした。最初に売れた赤いGLの姿も、しっかり脳裏に焼き付いています。以来スバルと一緒に育ったのです」

父親の苦労を眺めながら成長した彼は、やがて父の跡を継ぐことを決めた。

2020年は彼らの販売店の創業40年にあたる。そうした意味でも記念すべきレストアである。

マージ家が営むアウトサローネ・モンテカルロがレストアを開始した1980年「スバルGL(レオーネ)エステートバン4WD」。(写真=Autosalone Montecarlo)
マージ家が営むアウトサローネ・モンテカルロがレストアを開始した1980年「スバルGL(レオーネ)エステートバン4WD」。(写真=Autosalone Montecarlo)拡大
ボディーのレストアで最も苦労したのは、フロントフェンダーとサイドシルに発生していたサビとの格闘であった。(写真=Autosalone Montecarlo)
ボディーのレストアで最も苦労したのは、フロントフェンダーとサイドシルに発生していたサビとの格闘であった。(写真=Autosalone Montecarlo)拡大
近日レストアに着手する予定の1.8リッターOHVボクサーエンジン。エアクリーナーの背後にある広大なスペースはスペアタイヤ用。
近日レストアに着手する予定の1.8リッターOHVボクサーエンジン。エアクリーナーの背後にある広大なスペースはスペアタイヤ用。拡大
1980年代のクルマは、小型車でも車内がこんなに広かったことを実感する。
1980年代のクルマは、小型車でも車内がこんなに広かったことを実感する。拡大
武骨ともいえるエクステリアとは対照的に、ダッシュボードは1980年代特有の明るい未来感にあふれている。メーターパネルの手前から左右に生えたダイヤル式のライト/ウオッシャースイッチにも注目。(写真=Autosalone Montecarlo)
武骨ともいえるエクステリアとは対照的に、ダッシュボードは1980年代特有の明るい未来感にあふれている。メーターパネルの手前から左右に生えたダイヤル式のライト/ウオッシャースイッチにも注目。(写真=Autosalone Montecarlo)拡大
チェックのシート地は、今見ても心躍るデザインだ。「メルセデス・ベンツ300SL」のタータン柄や「ポルシェ911」の千鳥格子柄のように、スバルのアイコンにすればよかったのにと思う。
チェックのシート地は、今見ても心躍るデザインだ。「メルセデス・ベンツ300SL」のタータン柄や「ポルシェ911」の千鳥格子柄のように、スバルのアイコンにすればよかったのにと思う。拡大
ギアは4段変速であるものの、副変速機によって2WD/4WDロー/4WDハイが切り替えられた。
ギアは4段変速であるものの、副変速機によって2WD/4WDロー/4WDハイが切り替えられた。拡大
本稿で紹介する車両にはすべて、けん引用フックが追加されている。(写真=Autosalone Montecarlo)
本稿で紹介する車両にはすべて、けん引用フックが追加されている。(写真=Autosalone Montecarlo)拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、電子書籍『イタリア式クルマ生活術』(NRMパブリッシング)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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