単なる修復ではない

実はリッカルド氏には、2代目GLの宿題がもう1台ある。後期型である4灯ヘッドランプの1983年「ステーションワゴン4WD」である。

走行距離18万kmのこの車両についても、リッカルド氏は解説する。「もともとは、あるお年寄りの愛車でした。少し前にその方が亡くなったあと、奥さまが『売っていただいたあなたの店に、ぜひ』と譲ってくださったのです」

ちなみに、スバリストの父親に影響されたのだろう、リッカルド氏によれば「そのお年寄りのご子息も『トリベッカ(トライベッカ)』を購入してお乗りですよ」という。

こちらのGLも将来、販売店の小さな歴史コレクションとしてショールームを飾ることだろう。同時に、復活した姿を見た元オーナー家族に喜びをもたらすことも確かだ。

帰り際、ふと入り口を見ると、無残な姿をした2000年代の2代目「フォレスター」が置かれている。

こちらも記念レストア対象なのかと思って訪ねると、リッカルド氏は首を振った。

「少し前、ひとりの若者が訪ねてきたのがきっかけでした」

若者は、アフリカ探検旅行にふさわしい中古車を探していた。「彼のためにいろいろ物色しました。その結果がこのフォレスターというわけです」

その痛々しいコンディションからして、若者の財布への負担はそれほど重くなかったと筆者は想像した。それでいながら、世界中で実績あるスバルの4WD車が手に入ったのだから、幸運というべきだ。

旅に耐えるコンディションにすべく、近日作業に着手するのだという。若者は一生スバルファンになると同時に、マージ一家の親友になるに違いない。

彼らが営むサービス工場のレストアは単なる修復ではない。スバルを通じて自分たちの歩みを振り返るとともに、新たなつながりの糸を紡いでいるのである。

(文=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>/写真=Akio Lorenzo OYA、Autosalone Montecarlo/編集=藤沢 勝)

昔のお客さんから寄贈されたという1983年の後期型「GLステーションワゴン4WD」の姿も(写真手前)。リッカルド氏はレストア用車両を置くために、新たにこのスペースを確保した。
昔のお客さんから寄贈されたという1983年の後期型「GLステーションワゴン4WD」の姿も(写真手前)。リッカルド氏はレストア用車両を置くために、新たにこのスペースを確保した。拡大
「GLステーションワゴン4WD」のルーフ後方は、このように盛り上がっていた。
「GLステーションワゴン4WD」のルーフ後方は、このように盛り上がっていた。拡大
後期型ではメーターの電子化が進められたのがわかる。
後期型ではメーターの電子化が進められたのがわかる。拡大
アフリカを目指す若者のために探してきた2代目「フォレスター」。一般的な状態の中古車でも1500ユーロ前後が相場だから、旅を前にかなり節約できたと思われる。
アフリカを目指す若者のために探してきた2代目「フォレスター」。一般的な状態の中古車でも1500ユーロ前後が相場だから、旅を前にかなり節約できたと思われる。拡大
2代目「フォレスター」は近日レストアされ、アフリカへと旅立ってゆく。
2代目「フォレスター」は近日レストアされ、アフリカへと旅立ってゆく。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、電子書籍『イタリア式クルマ生活術』(NRMパブリッシング)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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