名門復活という使命のために

ウィリアムズと同じように、近年低迷からなかなか抜け出せないでいるのがマクラーレンである。歴代勝利数2位と3位、まさに名門中の名門であるこの2チームは、2020年のコロナ禍の影響もあり、現在積極的な資本増強に乗り出している。

この2つの“元”強豪チームには、他にも共通点がある。いずれも自動車メーカーとタッグを組んだワークスチームではなく、また「フェラーリのアルファ・ロメオ」あるいは「レッドブルのアルファタウリ(旧トロロッソ)」といった、トップチームから何らかの技術供与を得られる“Bチーム”でもない、独立系のチームであるということだ。

こうしたチームは、パワーユニット代を支払いながら、限られた経営資源の中で自前でマシン開発を行わなければならない。さらに他の中団チームとの熾烈(しれつ)な戦いを制し、“3強”との差も縮めなければならない。わずかでも失敗し、1点でも取りこぼし、ひとつでもコンストラクターズランキングが落ちると、F1から選手権順位に応じて振り分けられる分配金が減る。またレースで上位に顔を出さなくなるとスポンサーも手を引きがちになり、ますます懐具合が悪くなる。

こうした負のスパイラルを脱するために、ウィリアムズやマクラーレンは、いま資金の確保に全力を注いでいる。彼らはたんなるチャレンジャーではない。コロナ禍を生き抜くだけでなく、その先の“名門復活”が絶対条件として求められるのだ。2021年からは、各チームの予算上限を1億4500万ドル(約156億円)とするルールも施行される。さまざまな手を打てる時間は長くない。

間もなく80歳となろうかというフランクに代わり、近年ウィリアムズを切り盛りしているのが娘のクレア・ウィリアムズだ。副代表という地位に就く彼女も、「ウィリアムズの将来の成功のため、今回の株式売却をとてもポジティブに捉えている」と前向きな発言を繰り返している。成功すなわち勝利こそが、ウィリアムズが目指している唯一のゴール。そのことを理解した支援者を探しているのだ。

過去の資金難も、盟友の死も、自らの身に起きた不幸な交通事故も、エンジンパートナーからの突然の別れ話も、どんな困難にも諦めることなく勇敢に立ち向かい、華麗なる復活を遂げてきたフランク・ウィリアムズとその同志たち。彼らの勝利への情熱がF1の歴史を彩り、かたちづくってきたことに思いを巡らせれば、その復活を願わずにはいられない。

ワークスとBチームだけのF1など味気ない。ウィリアムズのように、気骨ある独立独歩のチームなしでは、F1はつまらなくなる。不撓のインディペンデントチームを、われわれモータースポーツファンは応援しなければならない。

(文=柄谷悠人/写真=BMW、Newspress、Williams Racing、ダイムラー、モビリティランド、ルノー、二玄社/編集=堀田剛資)

コロナ禍の影響はF1も直撃。ウィリアムズと同じ英国のインディペンデントチームであるマクラーレンも、株式の売却を検討しているという。
コロナ禍の影響はF1も直撃。ウィリアムズと同じ英国のインディペンデントチームであるマクラーレンも、株式の売却を検討しているという。拡大
フランク・ウィリアムズ(写真左)と、チームの副代表を務める娘のクレア(同右)。ウィリアムズは、F1ではめずらしい家族経営のチームである。(写真:XPB Images / Williams Racing)
フランク・ウィリアムズ(写真左)と、チームの副代表を務める娘のクレア(同右)。ウィリアムズは、F1ではめずらしい家族経営のチームである。(写真:XPB Images / Williams Racing)拡大
F1を代表する2大巨頭。2012年スペインGPにてフランク・ウィリアムズ(写真左)の70歳のバースデーを祝うのは、当時F1を牛耳っていたバーニー・エクレストンCEO(同右)である。かつてブラバムチームのオーナーだったエクレストンと、フランクは旧知の仲。今回のウィリアムズの株式売却に関しても、エクレストンが支援者探しに暗躍しているとの話もある。(写真:XPB Images / Williams Racing)
F1を代表する2大巨頭。2012年スペインGPにてフランク・ウィリアムズ(写真左)の70歳のバースデーを祝うのは、当時F1を牛耳っていたバーニー・エクレストンCEO(同右)である。かつてブラバムチームのオーナーだったエクレストンと、フランクは旧知の仲。今回のウィリアムズの株式売却に関しても、エクレストンが支援者探しに暗躍しているとの話もある。(写真:XPB Images / Williams Racing)拡大
2020年にウィリアムズをドライブするのは、在籍2年目のジョージ・ラッセル(写真左)と、リザーブドライバーから今季レギュラードライバーに昇格した新人ニコラス・ラティフィ(同右)。ラティフィの父マイケル・ラティフィは実業家であり、マクラーレンの株式を保有するほか、息子が籍を置くウィリアムズも資金的にバックアップしている。(写真:Williams Racing)
2020年にウィリアムズをドライブするのは、在籍2年目のジョージ・ラッセル(写真左)と、リザーブドライバーから今季レギュラードライバーに昇格した新人ニコラス・ラティフィ(同右)。ラティフィの父マイケル・ラティフィは実業家であり、マクラーレンの株式を保有するほか、息子が籍を置くウィリアムズも資金的にバックアップしている。(写真:Williams Racing)拡大
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